約 3,551,318 件
https://w.atwiki.jp/tmnanoha/pages/439.html
#1 新暦96年某所――― 足元の感触を確かめるように踵を鳴らす、 久しぶりの転送でつい不安になってしまったが、無事到着したようだ 「あのな、ヴィヴィオたちが心配なのは分かるけど、 毎度毎度お前が何処か行くたびに呼び出されるあたしの身にもなれっての」 暇じゃねぇんだよ、とお決まりの文句を続ける相方をなだめながら洞窟の奥へ進んでいく、 もう十では足りぬ年月を経たと言うのに変わらぬこのやり取りに笑みを浮かべながら、 顔なじみの調査班と挨拶を交わしつつ、漸く開けた場所に出た 「なのはさん!」 こちらに気づいて開けた場所の真ん中で“それ”を見上げていた一人が振り返る その声で気づいたのか、一人、また一人と周囲に居た者たちが集まってきた 「なんだよ皆雁首揃えやがって、 同窓会かってーの」 「まぁまぁ、ヴィータちゃん、いいじゃない」 ヴィータのいうとおり、元六課フォワード部隊全員が揃っていた、 なのは同様第一線を退いたものも中にはいるが、全員決して暇を持て余す立場でもない 「通信の目処が立ちそうだって聞いたけど、どう?」 「うん、いまユーノとシェリーが頑張ってるところ」 フェイトに促されて“それ”のところまで行く、 稼動状態ではないのか魔力反応らしきものは無い 「あれ?」 「どうしたんですか、スバルさん?」 “それ” ―――ロストロギア『カレイドスコープ』の本体を間近に見て、 首を傾げるスバルにエリオが声をかけた 「うん、あの子達と一緒に十二個の端末が落ちたんだよね?」 「そのはずですけど―――あれ?」 首を傾げながらスバルの見ている祭壇―――端末の収められていた場所を見ると 「そう、二十一個全部あるんだよね」 「ユーノ君、どういうこと?」 祭壇の手前に立つ、四十になろうかと言うのに未だに貫禄の付かない優男に問う 以前、一度髭を生やしてみたものの身内全員に爆笑されてやめた過去があるのだが、 そのあたりは余談だろう 「推論の域を出ないけど、 このロストロギアは平行世界同士で自分自身を補完しているんじゃないかな」 もちろん伝え聞くとおりの性能があればだが 並行世界Aで起きたトラブルに対し、起きていない並行世界Bの情報を上書きすることで 無かったことにする、と言うわけである 「それだと理論上壊せない訳ですよね?」 「うん、移設も難しいだろうから、 コレを封印するにしてもどうしたものだろうね」 ロストロギア指定されるものは使い方次第によっては極めて危険な代物ばかりであるが、 このような辺境の無人世界に観測員以外の人員を配置し続けるのもあまりメリットが無い 果たしてどうしたものか 「まぁその辺はお偉方の判断次第だろ、 それで、本題はどうなんだよ?」 難しい話に面倒になったのかヴィータが話を戻す、 これで最前線では部隊指揮官だったりするので不思議である 「大体できたよ、後は試してみるだけだね、 『カレイドスコープ』を中継して普通の次元通信の要領でデバイスに送れるはずだから」 だれかやってみる? と手元にコンソールを呼び出しながら問う 「どうしようか?」 「なのはさんどうですか、ヴィヴィオ達心配でしょ?」 それを言うならスバルもだけどねと言いながら、 特に反対意見も無い様なので頷いてユーノに指示を出す 「さて、それじゃ始めるよ」 キーを叩くユーノにあわせカレイドスコープに薄い明かりがともる、 さて、繋がるかなと思いながらなのはは空間モニターを開き呼びかけた #2 新暦78年――― 聖王医療院 「あ―――」 目を開けて最初に飛び込んできたのは、 泣きそうな顔で自分の手を握るフェイトの姿だった 「フェイトさん……」 「よかった…… ずっとうなされてたから心配したんだよ?」 酷く寝疲れをしているが、魘される様な夢を見ただろうか? 内容が思い出せないが、夢の内容を常にはっきり覚えている人間は居ない、 大方、軟禁されていた頃の夢でも見たのだろう 「皆に伝えてくるね、 あ、何か食べるもの持ってきた方がいいかな?」 勇んで席を立つフェイトに苦笑する、 空腹なのは事実だが、やはりフェイトから見ればまだまだ子供の域を出ないのだろうか 「いい女じゃねぇか」 病室の窓から聞こえた声にそちらを向くと、 窓枠に人がぶら下がっていた 「何でそんなところに居るんですか?」 「なに、やれ検査だなんだと面倒なんでばっくれたところでな、 で、通りがかったら逢瀬の最中だったんで」 空気を読んで窓の外で見てた、と窓枠に腰掛けて言う男 一般論として、人それをデバガメという…… 「そりゃ日ごろからあんな女の世話になってりゃ肉付き薄い女に興味もわかねぇか それで、坊主―――もうやったのか?」 「んな……なななな」 「何を」と男の言葉に返しかけ、その内容を直感的に察して、 エリオは耳まで真っ赤になって言葉に詰まった 「なんだよ勿体ねぇな―――それともあれか、 他に囲う女が……」 「プラズマザンバー!!」 轟音立てて振りぬかれた雷光の剣から身をかわす、 病室がずいぶん風通しがよくなった気がするが気にしてはいけない 「子供に! 何を!! 吹き込んで!!! いるんですか!!!! 貴方は!!!!!」 いつの間に戻ってきたのか、肩を震わせて叫ぶフェイト 「ネンネじゃあるまいしそんな目くじら立てるもんじゃねぇだろ、 それとも―――その歳で“まだ”なのか?」 もしくはそっちの趣味かなどといぶかしむ男、 実際にそういう噂が立っているのは間違いではないのだが 「ここにいたのかランサー」 その時、 この状況に対し、どこから突っ込めばいいのかと言った表情でアルトリアが顔を出した 「フェイト、食事はこの荷車で良かったのでしょうか? 一人分にしては些か多すぎる気がするのですが」 「あ、うん」 運んで来たカートの積荷(食べ物)に頷く、 状況を無視したかのようなアルトリアの態度だが、 どうやらフェイトに冷や水を浴びせる効果はあったらしい この男―――ランサーとフェイトの相性はあまり良くない 粗野と几帳面と言う性格面の齟齬は言うに及ばず、 こうした下世話なやり取りとなるとフェイトは些か潔癖過ぎる 「では荷車はこの辺に置きます、 ―――待てランサー、どこへ行く」 「もともと声をかけたのはついでの寄り道なんでな、 うるさいのが来る前にふけさせて貰うぜ」 言うなり窓枠に手をかけて出て行くランサー、 サーヴァント最速の名は伊達ではないのかあっという間に見えなくなる 「逃げられましたか」 間一髪で出遅れた形でシスターシャッハが病室に現れた こちらの方は既に石化の影響は無いらしく、 取り立てて怪我も無い為いつも通りの法衣姿である 「追います、シスターは下を あの英雄は生き延びることに関しては最優と言って良い、 森の中でサバイバルとなれば恐らく並みの騎士では歯が立たないでしょう」 医療院の敷地の外はそれなりに木々なども生い茂り、自然豊かな山並みもある そんなところに逃げ込まれれば並みの魔導師では見つけることすら困難である それ故に、逆に下に飛び降りたのではなく建物の上に登っている可能性もある 「手伝った方が良いのかな?」 「いえ、それには及びません、 ランサーにしてもここに現れたのは彼なりにエリオを認めた故でしょう、 あるいは此処に戻ってくる可能性も否定できません」 その時は任せます、と言うと、 こちらも窓枠に足をかけ、一蹴りで飛び上がる、 数度とかからず屋上へ消えていくその速さは一陣の風のようであった 「あぁいう男の人にはなっちゃ駄目だからね、エリオ」 みなが立ち去り、食事の用意をしながらのフェイトの言葉に エリオは苦笑いしながら、はいと頷いた どちらかと言うとヴァイスに近い性格なので 自分には到底真似できないだろうというのもあるが、 ―――槍技に関しては教えを請いたいほどなのだが、きっと反対するんだろうなぁ などと思いながら、少年は箸を手に取った #3 ミッドチルダ地上本部八神はやて二等陸佐執務室 「はい、どうぞ」 ノックの音にはやては作業の手も止めずにそう言った 「失礼します、 シグナム二等空尉、スバル・ナカジマ防災士長両名、 本日より現場に復帰いたします」 ならんで入るなりびしりと隙無く敬礼する二人に頷く、 二人とも重症では済まない傷であったはずだが、突貫工事で治してきてくれた様だ 正直に言って本来なら当面休ませてやりたいところなのだが、 現実問題として人手が足りないのでそういうわけにも行かない 「早速で悪いけど、こっちが今現在分かってる分の資料になってる、 それと、近日中に地球に出張してもらうかも知れへんから二人もそのつもりでな」 「はい」 「了解です」 二人が資料を受け取った所で誰かが入ってきた、 「シグナムさん、スバルさん、 おかえりなさーい!」 「ただいま、ヴィヴィオ久しぶり……って、 増えてる?!」 見覚えの在る金髪とオッドアイの―――二人組に面食らい、 目を丸くして、スバルはとりあえず大きい方のヴィヴィオの頬を引っ張った 「ひひゃい、ひひゃい~!」 「変身魔法とかじゃないみたいだけど、どうなってんの?」 機人モードのセンサーまで使ってひとしきり確認し、 とりあえず変装の類でないと理解して、スバルは改めて問いかけた 「なんだ、お前は聞いてなかったのか?」 「目を覚ましてすぐ調整やって、荷物整理したらこっちに直行でしたから、 詳しいことは何も」 移動中は寝てましたし、と言うスバルにシグナムはそうだったなと頭を掻いた 「まぁなんと言うか、 ―――ちょっと違う未来から来たヴィヴィオなんよその子、 あと一緒にヴァイス君とスバルの子供いうんも来てる」 「私の子供、ですか?」 それは、会ってみたいような怖いような、とスバルが興味深げに呟く、 実際問題としてそもそも真っ当な生殖、出産が可能なのか不安なのが怖い理由である 「みんな向こうで待ってるんだよ」 「そうだな、面倒なところは私と主はやてで片付けておく、 お前は先にみなに顔を見せて来い」 シグナムにそう言われ、ヴィヴィオ(×2)に連れられて休憩室に向かう、 途中、大雑把に二人に説明を受けたがいま一つ駆け足過ぎて理解できなかった で――― 「あの子が、そう?」 休憩室のベンチに座りボーっとしている少女を指しての問いに皆が頷く、 ヴァイスの子供だという青年の話によれば普段はもう少し明るい子であるらしい 「機人モードの制御とか、 いろいろこっち来る前から思いつめてるとこがあったからなぁ」 心配なんだけど、どうしよう? と言うヴィヴィオ(大)に対し、 大丈夫任せてと、胸を張って答えるスバル まったく持って根拠の無い自信であるのだが 「ほんとに大丈夫、あんた?」 「大丈夫だよティア、平気ヘイキ」 一度なのはに目配せしてから、心配そうなティアナに向けて笑いかけ、 無警戒にひょいとスバルは少女の隣に腰を下ろした 「……お母さん―――」 「は~い、お母さんですよ」 隣の気配に気づいてようやく首を巡らせた少女に対し、暢気にそう答える 「怪我は―――いいの?」 「大丈夫だよ そっちこそ手、大丈夫?」 振動破砕の過負荷は並ではない、 骨格系が一撃で全損などということもありうるのである それをよく知るだけにスバルの心配は少女の体のほうだった 「平気だよ、そんなの……」 いま一つ会話のリズムが悪い、かと言って拒絶している訳でもない なんと言うか――― 「何か、不安?」 「ふぇ?」 成長に実感が無かったり、能力が制御できなかったりする状況で、 不安でないはずが無いだろうと思いながらも聞いてみる、 返答は無いがなんとなく当たりかなとスバルは思った 「いいんじゃないかな別に、 ヴィヴィオも、アルバート君も、別にそれで怒ったりしないでしょ?」 「そうだけど……」 「苦しかったり、悲しかったり、悩んでたりする時に傍に居て支えてくれて、 嬉しかったり、楽しかったりするときに一緒に喜んでくれる ずっと、そうしてくれる人達なら、迷惑掛けても言いと思うよ いつかその人が苦しかったり、悲しかったり、悩んでたりする時に傍に居て支えてあげて、 嬉しかったり、楽しかったりするときに一緒に喜んであげられれば」 それが友達で、家族で仲間ってことだよと締めくくる 別に捻ったところの無い唯ありきたりの常套句だがそれゆえに真実だとも言える 「なんか、綺麗に纏めたような、単に他力本願な様な……」 「別にどうでもいいだろ、お前の頭で考えて答えが出るわけでもあるまいし」 「ひどいカズ君、なんか私馬鹿みたいじゃない」 「馬鹿みたいって、 ―――そもそも頭よくないだろお前」 む~と唸ってそっぽを向く、 その様に誰かが笑い出し、気が付くとその場に居た全員が笑っていた 「ふむ、なにやら知らんが纏まった様で何よりだな」 「そうですね」 なのはも彼らの様子に笑みを浮かべながらライダーの言葉に頷く、 何だか士気が上がってきた気がするのは気のせいではなかろう、それは良いことだ 「なんでアルバート・グランセニックなのに“カズ君”?」 スバルの問いにアルバートが目をそらす、 その問いは彼が此処に来てから幾度と無く繰り返され、 ヴィヴィオ(小)も躍起になっている謎であるのだが 本人が黙秘を続けるため分からないままである 追求しようとスバルが身を乗り出しかけたその時だった 「アル、デバイスに通信が入ってるよ?」 ヴィヴィオの言う通り、 テーブルに置かれた待機状態のアルバートのデバイスに小型の空間モニターが開き、 着信を告げている 「発信者は―――あれ? レイジングハートになってる」 当の本人、レイジングハートとそのマスターは目の前に居るのだから そんな通信をする必要性はまるで無い、つまり――― “The communication from the other party ties.” 「まてRヴァリスタ―――なんかやな予感がする」 マスターの指示を豪快に無視してデバイスが通信を接続する 当人(機?)いわく“It is a most immediate priority”.との事で、 マスターよりも上位の命令によるものであるらしい 「18年後の私か、 どんな人になってるんだろ?」 接続に時間がかかるらしいRヴァリスタの映すモニターのノイズに目を向けながら、 期待と不安を乗せた言葉をなのはが口に出す 一応一つの可能性に過ぎないためそう“成る”とは限らないが、 皆思いは同じらしく、固唾を呑んで見守っている そして、 “The communication ties.” Rヴァリスタが報告し、モニターに一人の人物が浮かび上がった
https://w.atwiki.jp/nanohahearts/pages/92.html
「けど、アリサに会うにはこうしたほうが早いと思ったからな。こちらから夜に仕掛けるとしますか」 話リンク ・ストーリー アリサが大学の構内で将来について考えていた時、フェイトからの電話。キング・ハーツの署名でミッドチルダの祭りに脅迫状が送られてきたとのこと。 警備のためにもお祭りに参加するなのはたち。そこでいろいろな楽しみを満喫したり、話し合ったりで戦いとは離れた日常を送る参加者。 その中で、脅迫状を送った張本人……ロードスターはどこかうきうきした感情を持ちながら、アリサを待ち望んでいたのだが……彼の心は一体…… ・内容 前回のミッドチルダ訪問から久しく、2度目の集団旅行と相成った今回。 今回は縁日ということもあり、浴衣だったり射的だったりのお楽しみもいろいろあるようですが。 ・なのは、ユーノ、ヴィヴィオ 本当は桃子と一緒に回りたかったヴィヴィオ。祖母好きであるこの孫娘。 そして魔法なしでは射的が全然当たらないなのは。大丈夫か、もと戦技教導官。 ヴィヴィオがやったらぱちりと一発というのは教育のたまものかそうでないのか。 そして娘に恋路の心配をされてしまう2人。大丈夫か、このカップル(未)は。 ・フェイト、アルフ、のぞみ 前回の話で多少はとげも取れたフェイトだが、まだ状況的には厳しいか。 ・アリサ、久遠、那美 カロリーが気になりつつも食べてしまうアリサ。久遠と那美は特に何もせず。 ・すずか、ヴィータ 人数の少ないグループのお回り。 こちらはすずかも気にしているのか、はやてとヴェロッサの馴れ初めについて確認。 ただし、すずかも何かを思っているようだが……それは後々わかります。 ・はやて、クロノ、ヴェロッサ 何を思っているのか八神流格闘道場なるビラを配っているはやて。ヴェロッサも協力するあたり、やって良いことと悪いことの区別ついてますか? 傍から見たらダダアマカップルについてきてクロノはよかったのだろうか。 そしていじられるだけいじられるクロノ。 ・そして…… 脅迫状を出したのはロードスターだった。 のだが、どこか悶々とした雰囲気を出している。 目的がアリサに会いたいという、犯罪とは全然関係ない形を出しているからである。 彼の真意は一体。 音楽同士の激突 縁日小旅行(前編) 縁日小旅行(後編)
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3306.html
マクロスなのは 第2話「襲撃」その1←この前の話 『マクロスなのは』第2話その2 (*) 30分後 アルトはガウォーク形態のVF-25を、超低空で飛行させながら郊外へと向かわせていた。 管理局の広報担当者曰く、 「例えあなた達の物でも、質量兵器を管理局本部ビルの前に置くのは体面もあり困ります。だから受け入れ先が見つかるまで、郊外の施設中隊のヘリ格納庫に移動してください」 との事であった。 また、今後VF-25は機体自体がシール(封印)されるか、武装が全て撤去されてしまうそうである。 「しかし、魔法の世界とはなぁ・・・・・・」 簡易的な検査によると、俺とランカにもクラスオーバーA相当のリンカーコアが存在することが確認されていて、この世界でも十分やっていけることがわかっていた。 (EXギアなしで空を飛べるのか・・・・・・) この青い空を風を切って飛ぶ自分の姿を想像して内心ほくそえんでいると、レーダーに映る多数の小さな機影を発見した。 そちらの方向をみると、人間ほどの大きさの全翼機、魚でいうエイのような形をした航空機がいた。数は60機ほど。それらは綺麗な編隊を組んで飛んでいた。 (管理局のゴースト(無人機)か?) そんなことを考えるうちにそれらは急降下し、レーザー様のものを撃ち始めた。 (なに・・・・・・?) 驚愕しつつもモニターで彼らの行方を追う。着弾地点はどうやら学校だ。どう見てもそこは軍事基地には見えないし、下で逃げ惑う子供は小学生程度にしか見えなかった。 そこでは警備の者が散発的な対空射撃を行っているが、当たらないのかそれらはびくともしない。 そのゴーストは後に『ガジェットⅡ型』と呼ばれる機体で、速い上にAMFとシールドを展開しているので全く歯が立たないのだ。 防衛側は徐々にそのレーザーに倒れていく。建物に当たってもなんともないところを見ると非殺傷設定のようだが、それは子供に当たれば後遺症を残すに十分だろう。なぜなら彼らはバリアジャケットと呼ばれる装甲服を着ていないからだ。その程度のことははやてやなのは達からこの世界のこととして説明されていた。 いますぐ反転して救援しに行きたい衝動にかられるが、はやて達から厳重に質量兵器(VF-25)の使用禁止命令を受けていたため、あと1歩を踏み出せずにいた。 その時、視点がそのある一点に止まった。運動場の端の小屋からみんなのいる校舎に逃げ込もうとしたのだろう。子供が1人、運動場の真ん中を走りながら横切っていた。 (バ、バカ野郎!小屋にいれば安全なのに!) もちろん思いは届かない。 また、更に悪い事に彼は転んでしまった。それに興味を持ったのか、数機のゴースト(ガジェット)達が子供へと向かい、撃ち始める。 そこに1人の警備員が校舎から駆けつけた。彼は全方位バリア(魔力障壁)を張って子供を庇う。 しかし、ゴースト達は執拗だった。何発も何発もレーザーを撃ち込む。それは無人機が行うのに殺意すら感じられる。 その猛攻は遂にバリアを破り、レーザーが子供に覆い被さった彼の身を焦がす。 その光景はかつてフロンティアを襲った第2形態のバジュラの大群が、そこを蹂躙する光景をまざまざと蘇らせた。それと同時に、恋人を守って宇宙に吸い出されていった親友であり戦友であった者の姿が、その警備員と重なった。 瞬間、彼の中で何かが切れた。 45度傾いていた左手のスラストレバー(エンジン出力調整レバー)をさらに倒して真横に。 するとガウォーク形態だったVF-25は即座にファイター形態に可変した。続いて空力特性を悪くする翼下のフォールドスピーカーをパージ、スラストレバーを押し出しA/B(アフターバーナー)を点火。後ろから蹴られたかのように一気に増速する。しかしその手はコックピット前面の多目的ディスプレイを操作し続け、全ての兵装のプロテクトを解除していく。 多目的ディスプレイに映る兵装モニターが緑色の〝SAFETY(セーフティ)〟の文字から赤い〝ARM(アクティブ)〟という文字に変化する。 そして現場への到着と同時にさっきの2人とゴーストの間をわざと飛び、フレア(赤外線誘導型ミサイル回避用の高熱源体)を数発撒き散らした。 すると、予想通り危険度の優先順位を再設定したゴースト達は、こちらを追ってきた。その数は総数の半分程度にすぎないが、2人が逃げ込むには十分な隙を与えたはずだ。バックミラーで2人の退避を横目で確認すると、一路、海を目指す。 (こんなとこに墜とせるかよ) 下は住宅地。ゴーストが墜ちたらその被害は計り知れない。また、VF-25の装備するFASTパックの追加武装であるマイクロミサイル型HMM(ハイ・マニューバ・ミサイル)は、対バジュラ用のMDE(マイクロ・ディメンション・イーター)弾頭を搭載している。 バジュラの反乱に備えて改良と生産の続くこの弾頭は1発、1発が超小型のブラックホール爆弾のようなものだ。そんなものが万が一外れて民家に当たったら・・・・・・と思うと背筋が寒くなる。 幸い海までは10キロなく、すぐに眼下は青く染まった。 「ここなら・・・・・・!」 呟くと、押し出していたスラストレバーをフルリバースして簡易ガウォーク形態(噴射ノズルのついた足を展開するだけで、腕を省略した形態)に可変して足を前に振り出し、強烈な逆噴射を行う。それによって、従来の戦闘機のエアブレーキとは比較にならない加速度で減速、さらにバックした。 対してVF-25を全力で追っていたゴースト達は当然そんな機構などなく、勢い余って通り過ぎていった。 その航跡を目で追いながらミサイルのスイッチに指をかけると、ゴースト達を流し見る。するとそれに連れてコンピューターが敵にマルチロックオンを掛けていった。そして数にして10強の敵をロックオンレティクルに収めたのを確認した。 「アタァークッ!!」 掛け声と同時に、VF-25のエア・インテーク(吸気口)上に装備されたミサイルランチャーの装甲カバーが〝ガパッ〟と開く。 それと同時に内部のHMMが飛翔していった。 音速を遥かに超える戦闘機やバジュラに対抗する為に作られたこのミサイルは、内蔵するAI(人工知能)によって回避行動をしつつ1機につき3発ずつ、着実に命中した。 炸裂と同時に30もの紫色の異空間が出現し、空間をえぐりとっていく・・・・・・ あっという間に10数機の友軍を失ったゴーストだが、学校からやってきた分隊との合流を果たすと再び向かってきた。 これにはさすがに焦った。 VF-25は単体としてミサイルを搭載していないが、ブースター以外パージしていなかったFASTパックの追加武装によって肩部に38発のマイクロミサイルを搭載している。こちらの圧倒的な力を見せて撤退に追い込もうと思って、その数の4分の3強にも上るミサイルを一斉に使う大盤振る舞いをしたのだが、相手は損害をまったく恐れていなかったようだ。 また、MDE弾頭はお世辞にも安全とは言い難い。大気圏内で空間を抉り取れば、そこにあった大気は当然消滅する。すると気流がめちゃくちゃになり飛行を妨害する。 炸裂と同時に放射される大量のフォールド波の奔流も人体に悪影響を及ぼさないという保障はない。 それらを勘案して残ったミサイルの斉射を見送ると、兵装をチェックする。 「ガンポッドとビーム機銃、あと格闘でしのぐしかないか・・・・・・」 VF-25は再加速して敵に対峙した。 (*) 5分後 残る敵の4分の1を撃破したが、ガンポッドの残弾はすずめの涙となっていた。 撃破した敵に比べて弾の消費が多いのは、ここが大気圏であるせいだった。普段無重力で、ほぼ真空である宇宙での戦闘に慣れているためその修正に多くの弾を割(さ)いてしまったのだ。 また、敵もこちらが完全無欠の質量兵器だとわかったのだろう。エネルギーを防御力に転換するアドバンスド・エネルギー転換装甲(ASWAG)にかかる負荷が先ほどから大きくなっていて、構造維持のキャパシティ確保を脅かしている。これは相手の攻撃が殺傷(物理破壊)設定になったという事だろう。 そして転換装甲にエネルギーを回したため、両エア・インテークの隣(バトロイド時は腰)に装備された2基の『マウラーROVー25改 25mm荷電粒子ビーム機銃』、2門の頭部対空レーザー砲『マウラーROVー127C 12.7mmビーム機銃』も打ち止めだ。 脚部の装甲兼用のコンフォーマルタンクに入った推進剤もこの戦闘機動を続けるには残り少ない。通常飛行なら無尽蔵に存在する空気を圧縮膨張させて推進剤にすれば十分だが、通常の推進剤を使えば推進力は空気に比べて約6割アップする。またVF-25の各所に装備された高機動スラスターを作動させるにも推進剤は必要だ。自らを数倍する敵にあたるには推進剤に頼る他に選択肢はない。 しかし、ガンポッドに残る弾同様、推進剤はほとんどなくなってしまっていた。 「おっと!」 敵の激突覚悟の特攻攻撃に、ファイター形態のまま可変ノズル基部に装備されたスラストリバーサを吹かして急減速。そのままバトロイドに可変して肩すかしを食らったゴーストに射角を調整すると、『ハワード GU-17V ガンポッド』を一斉射。装填されていた対バジュラ用58mmMDE弾で大穴を空けて撃墜した。 しかしその機動でほとんど空中に止まってしまったことにより、ゴースト達は集中砲火を浴びせようと反転してくる。だがそれを甘んじて受け入れるほど馬鹿ではない。 即座にガウォークへと可変していたVF-25はその場から滑るように急速に離れ、こちらの動きについて来れなかったらしい1機のゴーストをバトロイドに可変してマニュピレーターで鷲掴みにする。 そして真後ろからこちらを追尾してきた3機のゴーストに向き直ると、フリスビーのように投げてやった。 金属同士がぶつかり合う鈍い激突音。 3機は密集していたため即席フリスビーは見事ゴースト達の追尾を阻止していた。続いて止まったそれらをガンポッドで照準、スリーショットバースト(3点射。3発だけ連続で撃つ事)を行う。しかし58mmMDE弾の狭い炸裂範囲に4機全機を見事に巻き込んでこれを海の藻屑とした。 だがその戦果に満足することなくすぐにファイターへ可変し、位置を変えた。次の瞬間にはその場所を敵の集中砲火が覆った 周囲を警戒しつつガンポッドに残る残弾を確認。 (もう持たないな・・・・・・) さきほどのフリスビー戦法も拳やコンバットナイフを用いた肉弾戦も加速や制動の多いせいで推進剤を大量に消費する。かといってガンポッドは残り1秒ぐらい全力で斉射すれば無くなるほど弾が欠乏していた。 (残った推進剤を全部注ぎ込んで一気に戦線離脱するしかないか・・・・・・) と思い始めた時、陸の方から飛んでくるものがあった。目を凝らすと、人が音符のような杖を持ち、編隊を組んで空を飛んでいる。ようやく管理局の空戦魔導士のご登場らしい。 「ほんとに新・統合軍みたいに遅いやつらだ」 フロンティアのそれを思い出して呟く。そしてそれゆえに内心気が気でなかった。空戦魔導士部隊を擁する地上部隊は新・統合軍とは似た苦境であるという。そして統合軍はバジュラに手も足も出なかった。だからどうしても彼らが統合軍と重なって見えて、 「あいつらにゴーストが落とせるのか?」 と心配になった。 その結果はすぐ出た。 ゴーストに対して魔力ビーム(砲撃)による攻撃が行われるが、AMFによって出力を下げられ決定打にならない。そこで魔導士達は2人1組になって1機に同時に着弾させる事によって初めて撃墜することに成功した。なるほど、その技量はなかなかのものだ。しかし、いかんせん数が足りなかった。 速度もゴーストの方が速く、5~6機撃墜したあとその機動力で連携を崩され、逃げ惑うばかりになった。 「・・・・・・やっぱりか」 仕方なく虎の子のミサイル8発を、彼らの後退を援護するように全弾発射。必要なくなったミサイルランチャーをパージする。 この援護によって魔導士のほとんどが敵の追尾を逃れたが、1人だけ孤立してしまった魔導士の少女がいた。 彼女は他の魔導士のように飛ばず、足元に道を展開しつつその上を走るように移動する方法をとっていた。 また、敵を撃破するときも魔力弾や魔力ビームでなく、直接殴って撃破するという珍しい戦い方をしていた。それゆえ1人でも撃破率は高かったが、移動方法は効率が悪く、MDE弾頭の起こした気流の激変に煽られて逃げ遅れたらしい。 周囲は彼女を助けようと援護するが、彼女は周囲の敵の数に翻弄されて動けなかった。 (*) 彼女の名はスバル・ナカジマといい、今回の出撃は有志だった。なぜなら通常スクランブルするはずだった空戦魔導士達はさっきまで労働争議をやっていて、疲労のため使い物にならなかったからだ。 彼女は『ミッドチルダ防衛アカデミー』と呼ばれる管理局員を養成する学校の3年生である。 防衛アカデミーの推薦を獲得した彼女は、最後の実習地として『本局第1試験中隊』と仮称で呼ばれているはやての部隊を彼女の親友と共に志願していた。と言っても教官からは難しいかもしれない。期待しないでくれ。と言われていたが・・・・・・ まだ実績もない、難しいと言われる部隊であることに級友たちが敬遠する中、彼女がそこを強く志望した理由は簡単だった。それはガイドブックの教官の欄に、彼女の尊敬する「高町なのは」の名があったからだ。 (最後にもう1度、なのはさんに会いたかったなぁ・・・・・・) 時折ベルカ式魔力障壁を越えてくるレーザーに身体を焼かれる痛み。それは徐々に彼女の気力を奪っていき、観念しかけていた。 しかしその時、ノイズ混じりの念話が入った。 『(させるか!)』 どこだと思い発信源を辿ると、こちらを援護してくれていた質量兵器からだった。それは機関砲を乱射しながらこちらに突撃してくる。そして自分のすぐ隣を擦過していった。 よく見れば、質量兵器はその間にいた航空型魔導兵器を全て蹴散らしていて、そこにはぽっかりと切り開かれた道があった。 (チャンス!) 即座に自身の移動魔法『ウィングロード』を開けてもらったその包囲の穴に高速展開し、その上をインラインスケート型の簡易ストレージデバイスで駆け抜けていく。 しかし、そこに1機の航空型魔導兵器が体勢を立て直し、立ち塞がる。 (ここで止められてたまるか!!) カートリッジを2発ロード。その間もレーザーが身を焼いたが、かまわず最高速で走りながら篭手型のデバイスを着けた右腕を振りかぶる。 「一撃、必倒!ディバイィン、バスタァァーーーーー!!」 右腕から発射されたゼロ距離の魔力砲撃は、粗いながらも強靭な破壊力を見せ、シールドを貫通。それを粉砕した。 その後抜け出るまでの包囲の穴の保持は友軍と、いつの間にかロボットに変形した質量兵器がやってくれたらしい。 それ以上詳しい事は分からなかった。なぜなら抜け出すと同時にさっきとは違う念話が入ったからだ。 『(総員直ちに射軸上から退避してください)』 それは聞き覚えのある声だった。同時に出現したホロディスプレイの射軸線を頼りに発信源を辿ると、地上の海岸線だった。果たしてそこには巨大な魔力球が集束されつつある。それはオーバーSランクレベルの魔力砲撃を示唆していた。瞬間、誰もが射軸上から逃げ出す。 自身も友軍に肩を貸されて退避しつつ、あの魔力球に不思議な懐かしさを覚えていた。桜色の魔力光。あの声。そしてSランクの魔導士。それらは1本につながった。 「(あれは、)なのはさんだ!」 その名を叫ぶのと、なのはが発砲するのは同時だった。 空を切り裂く一条の桜色の光は、あやまたずガジェット達に突き刺ささった。そしてそれらの展開するシールドを易々と貫き、その3分の1を一瞬で叩き落とした。 スバルはそれを神を見るかのように見つめ、次の瞬間にはやってきた傷の痛みと安心感で意識を喪失した。 (*) 少し離れたところで、ガウォークに可変してそれを眺めていたアルトは驚愕した。 ガンポッドに残る全弾を注ぎ込んで管理局の魔導士を助け、機体の通信システムのプロテクトをスルーして出現したホロディスプレイの退避要請に従って退避してみればこのビーム砲撃だ。 VF-25のセンサーによると、VF-27『ルシファー』の重量子ビーム砲と比べても、見劣りしない数値を叩き出していた。 (いったいどんな兵器だ?) そう思い、モニターで発砲地点の倍率をあげる。するとそこには、自身の特徴的な杖から大量の煙を出し、構えを解いた高町なのは一等空尉の姿があった。しかし彼女の顔は先ほどまでランカと談笑していた少女の顔ではなく、歴戦の戦士の顔がそこにあった。 (*) その後残るゴーストの掃討は彼女の参加で拍子抜けするほどあっけなく終わった。 (*) 気づくと私は寝かされていた。全身が痛みに悶えるが、なんとか目を開けてみる。はたして視界には青い空。どうやらまだ外らしい。しかし素手で触った寝床の感触は布だった。 そして見回してみると、ここは海岸で自分は救急車に乗るために担架に乗せられていたようだ。というような状況把握がどうでもよくなるような光景があった。 「なのはさん・・・?」 おもわず救助隊員に簡単に負傷場所と理由を説明していたらしい彼女の名を呼んでしまった。 「ん? 大丈夫だった?」 なのははこちらの意識が戻ったことに気づいて、こちらへやってきた。それだけで全身の痛みを忘れてしまうほどパニックに陥ってしまった。 私がなのはを尊敬し、憧れる理由。それは6年前の事故がきっかけだった。 その日デパートに家族と出かけていたが、運悪くはぐれ、これまた運悪く火災にまかれてしまったのだ。 この時まだ幼かった私を救助に来たのが、当時出世街道を順調に登っていたエース。高町なのは二等空尉だった。 記憶に残る彼女の姿は凛々しく、カッコよくて、それ以来なのはに憧れ続けた。 私はクラスAのリンカーコアを持っており、成績も主席、次席クラスと、極めて優秀だったため、再三再四 「次元宇宙で働かないか?」 と本局の誘いが来た。しかしそれを全て断り、わざわざミッドチルダを守る道を選んでいた。それは陸士部隊の部隊長である父や、同じく陸士部隊に籍を置く姉の影響もあったが、同じぐらいに大きくなのはの存在があった。 それほど自分の人生を大きく左右した憧れの人が目の前にいる。 パニックに陥るには十分な理由だった。 『は、はい!いえ、あの、高町教導官・・・・・・一等空尉!』 痛みを忘れたといってもやはり無理に動けば痛いもので、上体を起すことが精一杯。しかもその痛みとパニックでなのはに関する知識がこんがらがり、状況に合わない「教導官」という役職が出てしまった。 しかし彼女はそんな小さなことを関しないかのように答える。 「なのはさんでいいよ。みんなそう呼ぶから。・・・・・・6年ぶりかな?大きくなったね。スバル」 「!! えっと・・・あの、あの・・・」 「うん。また会えて嬉しいよ」 その笑顔を伴ったセリフと、頭に置いてくれた手は反則的なまでのスピードで私の心に深く染み渡った。おかげで涙腺が瞬時に決壊。止まらなくなってしまった。 そんな私をなのはは、救急車に担架と共に搬入し、担架の横にある席に座りながらながら根気よく落ち着くのを待ってくれていた。 (*) 海岸にはなのはの要請した救急車が待機している。そこには先ほどの傷の酷かった魔導士の少女が担架に乗せられて救急車に搬入された。 しかしなかなか搬送されない。様子を見に行こうにもガウォーク形態で着陸するVF-25の周りには先ほどの空戦魔導士部隊が質量兵器使用でこちらを警戒するように配備されているため動けない。それでも理由を知りたくなったアルトは、高感度指向性マイクを照準した。 すると少女の声に混じり、なのはの声が聞こえてきた。 ―――――――――― 『私のこと、覚えててくれたんだ』 『あの・・・覚えてるって言うか・・・・・・あたし、ずっと、なのはさんに憧れてて・・・・・・』 『嬉しいなぁ。バスター見て、ちょっとびっくりしたんだよ』 『んあっ!』 〝ガタッ〟という、その救急車を大きく揺らすほどの彼女の驚きは、 「なんだ元気そうじゃないか」 と、彼女を心配していたらしい周囲の魔導士達に笑顔をよんだ。 『す、すみません。勝手に・・・・・・』 『うふふ。いいよ、そんなの』 『え、でも、その・・・・・・』 『まぁ、確かに独学で使うには少し危ないかな。これから〝私が見ていてあげられる〟から、一緒に頑張っていこうね』 『はい!・・・・・・え!?』 『ふふ。隊員さん、この子の搬送、よろしくお願いします』 『了解しました』 ―――――――――― なのはを降ろした救急車は一路、病院へと走っていった。 (*) その後、VF-25に関する事情がなのはの口からその場の空戦魔導士部隊の隊長に説明された。 そしてなのはが責任を持ってVF-25を格納庫までエスコート・・・・・・と言えば聞こえがいい。しかしそれは見かけだけだが、機体をバインドする強制連行になった。 これは 「『質量兵器は禁止』という主張を堅持するための体面的なものだろう」 と、たかをくくっていたアルトはその後質量兵器、とくにD(ディメンション・次元)兵器の使用について(「次元震が起こったらどうするんや!」とかで)はやてから恐ろしいお叱りを受ける事になるが、それはまた別の話である。 (*) 現場から少し離れたビルの屋上には、事件のすべてを見ていた1人の人影があった。 「またあの子達?まったく恐ろしい程の悪運ね」 彼女は普段のキャリアウーマン風の緑色のスーツに身を包み、呟く。 いつもならここで遠いい所から見ている〝彼ら〟が茶々を入れる所だが、今彼女は時空どころか次元おも通り越してしまっている。そのため、いかがフォールドクォーツを使用した精神リンクと言えど繋がらなかった。 「まぁ、その方が面白いわ。健闘を祈るわね。フロンティアと、ミッドチルダの皆さん」 転送魔法が行使される。そして彼女、グレイス・オコナーのいた痕跡を何一つ残す事なく、いずこかへ消え去った。 次回予告 踏み出した歩み。 彼らを待つものとは――――― 次回マクロスなのは、第3話『設立、機動六課』 ミッドの空に、彼らは何を描くのだろうか? シレンヤ氏 第3話へ
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/538.html
1 サウンドステージ01の地球派遣任務にシンも同行してると脳内補完して下さい シン「ふ~・・・何かこんなに落ち着いて風呂に入るのも随分と久しぶりな感じがするなあ」 エリオ「大きな公衆浴場ですよね。こういうのミッドには無いですし そういえばシンさんもなのは隊長達と同じ地球生まれなんですよね?」 シン「ん?そうだけど、俺の居た世界と隊長達の故郷のこの世界とでは時間軸そのものが違うというか・・ 寧ろパラレルの様なモノというか・・・俺にもよくわからないな。 それはそうとエリオ、せっかくフェイト隊長達やキャロが誘ってくれたんだから一緒に女湯に行けば良かったんじゃないか? 年齢も容姿も全然セーフだと思うぜ?(笑)」 エリオ「な、な、何言ってるんですか(汗)(汗)(汗)。そういうシンさんだって部隊長やなのは隊長に一緒に入る? って言われてたじゃないですか!」 シン「バ、バカ!あれは隊長達の冗談に決まってるだろ・・・(多分) つうか犯罪だっつうの」 はやて「は~シンと一緒に入りたかったなあ」 すずか「は、はやてちゃん・・・いくらなんでもそれは・・・でもシン君って今日初めて会ったけど何だか不思議な感じがするね 深く吸い込まれそうなワインレッドの瞳に、何処か寂しそうなふいんき(何故ry がして思わず抱きしめてあげたくなる感じが・・」 なのは「すずかちゃん、自重なの」 アリサ「そーかなあ?アタシにはただの無愛想な子供にしか見えなかったけど、とてもアンタ達程の女を釘付けにする男には思えないんだけど」 フェイト「とってもいい子なんだよ。少し不器用なだけで・・・でもとても一生懸命。 話してみればきっとアリサもシンの事気に入るよ」 はやて「フェイトちゃん!余計な事言わんでええ」 なのは「そうだよ!(これ以上シンに他の子にフラグ立てられたらたまったモンじゃないもの)」 アリサ「アハハ・・まあご心配無く。アタシは男の人はやっぱり年上がいいし♪ さてと、何か少しのぼせて来たから先に上がってるね」 すずか「うん。じゃあまた後でね」 シン「じゃあエリオ。俺は先に上がってるぞ」 エリオ「はい。僕はもう少し浸かってますね。またいつ来られるかもわからないし」 アリサ「あ」 シン「あ」 アリサ「あーシン君だっけ?どうだった?スパ銭は。なのは達のいる世界にはこういう所って無いんでしょ?」 シン「ええ、まあ。でも俺の故郷には似たような所もありましたから、丸っきり初めてってわけじゃないです」 アリサ「ふーんそっか。ところで一つ聞きたいんだけどさ・・・君はなのは達の事どう思ってるのかな?」 シン「え?な、何ですかいきなり・・・」 アリサ「マジメな質問だよ。あの子達の親友として君が彼女達をどう思ってるのかアタシは知りたい」 シン「・・・・・。隊長達には感謝しています。周りの世界に絶望して、もう生きていても意味が無いとさえ思ってた抜け殻人間だった俺に 手を差し伸べてくれた。 もう一度立ち上がろうと、自分の信念をもう一度貫いて行こうと決意させてくれた。そして・・・帰る場所も くれた・・・隊長達には感謝してもし切れません。尊敬もしています。俺なんかよりずっと強い精神を持っていて・・・ でも・・・その、アリサさんが知りたがってるような・・・今の俺が隊長達に対してそういう感情を抱いてるかどうかは自分でも 正直分かりません。 ただこれだけはハッキリ言えます。俺はもう誰も傷つけさせない。・・隊長達の仕事は時に生命に関わる任務もあ る危険な仕事です。 俺は隊長達を絶対に守りぬく。隊長達だけじゃない、エリオやキャロも、スバルもティアナもそして普通の人達 も・・・俺がこれまで培ってきた経験と力は壊す為のモノじゃない、守る為のモノだって。今ならハッキリそう確信出来ます。 ・・・って聞いてます?」 アリサ「う?うん・・聞いてるよ・・・(うわ~フェイトが言ってたこの子の一生懸命さってこういうことだったのか。 思ってたよりずっと熱いヤツじゃん・・・。シン・・アスカ・・か)よ、よしこの話はこれでオシマイ!ありがとうね。 素直に教えてくれて。 あ、あとアタシのことはアリサでいいから!呼び捨てでいいよ」 シン「ええ?あ・・ハァ・・・?」 なのは「何だかイヤな予感がするの・・・」 フェイト「私も」 はやて「私もや」 ティア「私もです」 スバル「?」 2 シン「そろそろ寒くなってくるし免許も取ったから新しく車を買おうと思うんだ」 六課の皆がびくりと体を振るわせた 同時に何故か皆から黒いオーラが吹き出て場があっという間に異様な雰囲気に包まれた 俺何かおかしい事を言ったのだろうか? 便乗 「シン?丁度フェラーリの旧車でかなりよい状態の中古車の情報が手に入ったから一緒に見に行きませんか?」 シン 「へ?フェラーリですか?でもイタリアの車ってけっこう愛が無いと乗れないくらい壊れるって――」 なのは「フェイトちゃん、仕事でも使うんだよ?まず整備暦の書かれた書類が付いてるか調べないと駄目なの」 はやて「せや!仕事で使うとなったら大事な所で壊れたら大変やで!?せやからここは固くインプレッサにしとき」 シグナム「お待ちください主はやて、まだ仕事も使うとはシンも仰っておりません、ここはステーションワゴンであるオペルの――」 シャマル「駄目よ、ホンダ・アヴァンシアの参考品なんてシンに似合わないわ。ここはマセラティの――」 ヴィータ「オペルのコルサ!シン、これにしとけって!!」 ユーノ「うわぁ、出るの初めてじゃないかな?……マツダのロードスターなんてどうかな?でもこれでもう出番無いんだろうな、 でも本望だよ出番くれて。ああ桃色の光が(ry」 レティ「初登場その2~。Zよ!フェアレディZS30改!直6キャブターボの悪魔のz(ry」 ザフィ「(日野自動車のレンジャーのダカールラリー仕様車とか……いやなんでもない、忘れてくれ)」 スバル「レガシィもいい車だと思うんだけどなー」 ギンガ「360なんてどうかな?でも台数もうそんなに無いから……リベロ――」 スバル「ギン姉、ミツ○シは敵だよ敵」 ティアナ「日産よ!日産のGT-R、もう発売までもう少しなんだからこれしか……別に薦めてる訳じゃないわよ!?」 エリオ「スズキのエスクードなんかどうかな?」 キャロ「あ、あの……マツダキャ――」 ヴァイス「シン!漢ならルノーだろ?!」 ヴィヴィオ「じゃあわたしお母さんといっしょのくるまがいいなー」 はやて「あーーー!!みんな自分の意見ばっかりでシンの意見聞いてないやん!ここは一つどれがええかシンに…… あれ?シンおらへん!?どこいったシン!?」 シン「・・・・・・それでセインさん、何で俺はここにいるんですか?」 スカリ「君が新しい車を決めると聞いてね、わざわざつれてきてもらったのだよ。ところでどうかねこのルーテシアと言う車は。 かつてラリー選手権でラニョッティがうんぬんかんぬん(ry」 「アウディに乗りましょう「チンクェとかダメカナ?「ギャレットにするッス!「わいわいあーだこーだぎゃあぎゃあモフフフフフ…はよせ な!サバダッササンサンサバディ~(ry」 どうやら俺の車の選択権は皆無のようだ。この時 シンは改めて「女の子は ヤンキーの17倍怖い」と思った 現在のシンの友達(現状) 友達 多数、仲間 大勢、変態 多数 もはや言葉も出ないシンだった… シン 「素直にホンダのスーパーカブにしようかな……、頑丈だし燃費凄いし安いし…でもバイクだし、困ったな……チゼータとかフォードに すればいいのかな。まだその名前の人出てない(ry」 補足 ウーノ「所で博士、ラニョッティが乗ったのはサンクターボとクリオ、主にルノー系列では?」 スカリ「クリオ=ルーテシアなのだよ、厳密にはサンクターボとクリオ・ウィリアムズだがね」 ウーノ「そう言えばランチア関連の人もいないですね」 スカリ「メルセデスやBMW、マクラーレンにランボルギーニ、数え上げたらキリが無いじゃないか」 ウーノ「日本車やフランス車が多いのは趣味でしょうか、特に富士重工の多さは異常――」 スカリ「それを言ってはいけないよウーノ、そういえば君は参加しなかったね?フィアットは結構有名の筈だが」 ウーノ「今回は妹達に譲るのも良いかと思いまして……」 スカリ「ふむ、君も彼に対して素直になれば私は嬉しいのだがね」 ウーノ「わ、私はドクターの秘所ですから……妹たちが羨ましいとかそう言う事は」 スカリ「君も素直になりたまえ、ほらまだ談義は続いているようだ。行っておいで」 ウーノ「……・・・失礼しますドクター」 シン 「俺、車買うのやめようかな…」 終われ。 スカリ「それにしても、何故私はフェラーリを薦めようと思ったのにルノーを薦めていたのだ?」 ルー子「作者のミス、ルーテシアとスカリエッティを混同していた」 スカリ「まったく呆れた物だね、しっかりと情報を確めてから書かなくてはいかんだろうに。 まあ紹介にはなっただろうし私も自分を勧める訳にいかん」 ルー子「男同士、801、新しい女難なの」 スカリ「……・・・ルーテシア? クアットロに毒されてないかね?」 ルー子「私はシンにアルピーヌを勧める。でも新世紀エヴァに出てきたあれじゃなくて古いほう、あっちのほうがかわいい」 3六課で飲み会がありました。 シン「もってこーい」 すっかり出来上がるシン(おかわりする度に徐々アルコール度数を増やしていった為) なのは「どう?シン盛り上がってる?」 ティアナ「らのはさん、そこ壁、あははははは」 スバル「ZZZZZZZZ」 はやて「何回も何回もアプローチしとんのになんでわかってくれへんのや、昨日かて(ぐだぐだ)」 シグナム「すいまぜん~主。許してくださ~い、えっくえっく。」 シャマル「箱根のみなさ~ん、機動六課ですよ~」 フェイト「(皆、ひどいなぁ)」←酔ってはいるものの唯一まとも ちなみにヴィータと年少組は参加していない。 シン「おう、フェイトさん」 フェイト「ん?な、なにかな?」 シン「あんた何でそんなに黒いんだ?」 フェイト「はい?」 シン「着てるもんぜーんぶ黒ってさ、お陰で下着姿黒でも全然違和感ないッスよ~」 フェイト「へ、へぇ~」(ピキピキ) シン「おう、それなら今度黒以外の服着てきてくださいよ」 フェイト「え、えぇ~?」 シン「何だったら服買いに行きましょうか?フリッフリのワンピースとかーはははは、ひっく」 フェイト「え、う、うん。いいよ。」 シン「よーしならけって~~~い(バタン)スースー」 後日この時の会話が録音されたテープによりフェイトと強制デートをする事になるのだが、 次の日、このテープが六課全員の知る事になりシンは地獄を見ることになる。 -19へ戻る 一覧へ
https://w.atwiki.jp/girlwithlolipop/pages/49.html
フェイト・テスタロッサ&ランサー ◆lHaWUMA7LM 「……」 「……」 無言。 音と呼べるものは、カチャリ、とナイフとフォークが食器に触れる音ぐらいなものだ。 少し年嵩のいった女は感情の読めない表情を貼り付けたまま、小さく切り分けた料理を口に運ぶ。 金色の髪を側頭部で二つに縛った童女は、隠し切れない動揺と喜色を努めて隠そうとしている。 カチャリ、カチャリ、と。 音だけが響く中で、しかし、童女は現状を受け入れている。 女が童女に激情をぶつけてこない日は珍しい。 ましてや、食事を共にするなど、それ以上だ。 「……どうかしら」 「え?」 年嵩のいった女『プレシア・テスタロッサ』は、やはり感情の見えない言葉を発する。 童女『フェイト・テスタロッサ』は、その意図が読み取れずに 「味は……料理なんて久しぶりにしたから」 「その……」 「昔は、よく作ってあげていたけど……美味しい?」 言葉とは裏腹に、ひどく興味の薄い様子だった。 それでもフェイトにとっては稀な、大げさに言ってしまえば、夢の様なことであった。 何が正解なのかを考えつつ、言葉を探る。 しかし、このような出来事に『慣れて』いないフェイトにとっては最適解の経験がない。 ゆっくりと考えたフェイトは、怯えるように声を出した。 「美味、しい」 「そう」 「また、作って欲し――――」 フェイトが言い切る直前、半ば被せるようにプレシアは言葉を紡いだ。 やはり、興味のなさそうにカチャカチャと、小さな音を立てながら。 「昔は苦手だったのにね」 「……え?」 プレシアは、やはり興味のなさそうに、ナプキンで口を拭う。 フェイトはプレシアの言葉を理解できず、口をつむぐ。 そんなフェイトの様子にすら気を取られず、プレシアは言葉を続けた。 フェイトに言葉を与えながら、その感情はフェイトに向かっていなかった。 「根菜が苦手なのね……体質的な問題なら考えたけど、単なる好き嫌いで。 だから、調理の仕方について色々と考えては見たけど、ダメなものはダメだったわ」 「……」 プレシアは自身の言葉がどんな意味を持っているのか理解しながら、しかし、何の躊躇いもなくフェイトへと告げる。 フェイトはその言葉の意味を理解できずも、脳に宿った記憶情報の曖昧な部分が痛みを発し、口を鎖す。 それは言葉を発することを辞めただけでなく、食事を摂ることも止める行動だった。 プレシアはもう一度尋ねた。 「美味しい?」 「……」 「ゆっくり食べなさい」 カチャリカチャリ、と。 音だけが響いた。 ◆ フェイト・テスタロッサは、プレシア・テスタロッサの実の娘ではない。 プレシア・テスタロッサが腹を痛めて、自然出産によって産んだ娘ではない。 アリシア・テスタロッサこそが、プレシア・テスタロッサの実の娘である。 「今から、貴女には聖杯戦争に参加してもらうわ」 「えっ……?」 プレシアの言葉にフェイトは虚をつかれた。 ジュエルシードの回収を命じられ、未だジュエルシードは揃っていない。 その最中に出会った少女との関係も、未だ曖昧なまま。 何も成し遂げておらず、心には自身も理解できない歪な想いだけが残されている。 「あの、ジュエルシードは……?」 「……貴女が考える必要のないことよ、フェイト」 プレシアは決してフェイトに本心を伝えようとしない。 フェイトもそれを知っている。 ジュエルシードは重要なものなのだろう。 それでも、ジュエルシード以上の物を見つけた、と言ったところか。 あるいは、ジュエルシードの索敵こそが時空管理局の目眩ましなのか。 目眩まし、といえば、全てが目眩ましなのだろうか。 本当の目的は聖杯戦争であり、万が一にでも時空管理局の介入を避けるために、ジュエルシードを用いた。 超のつくロストロギアであるジュエルシードならば、これ以上とない目眩ましだ。 先ほどの時空跳躍という大魔法の行使によって、大きな動きは当分ないと思っているはずだ。 正しく、機会は今なのかもしれない。 フェイトに様々な疑問がよぎるが、その疑問を口にすることは出来なかった。 「媒体は用意してあるわ。貴女は儀式を行えばいいだけ」 そう言って、プレシアはフェイトに手渡す。 触れ合った際に感じた手の温度は、ぞっとするほどに冷たかった。 手渡されたものは、次元固定された胎児のような形をした何か。 ジュエルシードとは異なる聖遺物であった。 遺失された世界――――あるいは書き換えられた世界に残されたもの、ロストロギア。 その聖遺物の名は白き月、『第一使徒アダム』である。 「始まり、あるいは、終わりを求めれば、誰もがその部屋に辿り着く」 「……?」 「ガフの部屋、そこに至るまでの道……今はまだ……」 すべての魂が生まれ、すべての魂が還るとされている空間の例え。 なぜ、今、その単語を口にしたのか。 フェイトは訝しみながらも、その意図を尋ねることは出来なかった。 フェイトはプレシアを愛している。 しかし、同時にフェイトはプレシアを恐れていた。 心の壁がフェイトとプレシアを確かに隔てている。 ◆ 「素に少女と杯。礎に使徒と契約の大公。祖には光の始祖アダム。 そびえ立つ十字には白雪を。四翼の天使は堕ち、白より出で、黒に染めし星を収束せよ」 「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。 繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を補完する」 「―――――Anfang セット 」 「――――――告げる」 「――――告げる。 汝の身は我が剣に、我が命運は汝の仮面に。 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」 「誓いを此処に。 我は生命の実を摂る者、 我は知恵の実を捕る者。 されど汝はその貌を獣に覆いて侍るべし。汝、衝撃に囚われし者。我は汝を祖とする愛し子――。 汝、死海を導く始祖、黒き月へと至れ、白き罪人よ―――!」 ◆ 「至らなければいけない……」 聖杯戦争におけるサーヴァント召喚の痕跡を眺めながら、プレシアはふらふらと歩き始めた。 プレシアの目的は、真に『魔に至る法』。 現在プレシアやフェイトたちが行っている魔法は、『魔を展開する法』。 この二つには大きな違いがある。 法を土台にして扱う術である後者に対して、前者は法そのものを扱う。 科学が物理法則を塗り替えることが出来ないように、後者は法を覆すことは出来ない。 言ってしまえば、後者の魔法は奇跡ではない。 前者は、まさしく法を塗り替えるものだ。 「……ッ!」 瞬間、プレシアの身体が震える。 喉を震わせ、口内から血が吹き出る。 時間がなかった。 崩壊に近づいているプレシアの身体。 それでもなお、ジュエルシードを放棄し、フェイトを聖杯戦争へと向かわせた。 己の目的のために、己の悲願のために。 『人類補完計画』 『天の杯』 『プロジェクト・F.A.T.E』 そのどれでもあって、そのどれでもないもの。 あるいは、流転する魂からの乖離。 あるいは、喪失した魂のサルベージ。 神をも否定する、始まりの魔法――それは彼女が求めた運命の夜。 『第一の魔法――― 魂のルフラン 』 ◆ 「……」 少女を精製し、少女性を確立し、少女を聖杯へと至らせる聖杯戦争。 フェイトは聖杯戦争参加の正しき手順を踏み、その正しさ故にこの聖杯戦争では異端となる参加者へと至った。 「……貴女が、私のマスター?」 そこに居たのは、白雪のような少女だった。 白い肌は雪原のようで、薄い青に染まった髪は青空のようで。 だからこそ、真っ赤な真っ赤な、血に染まったような槍が目を引いた。 感知の類に秀でているわけでもないフェイトでもわかる、超級の神秘を保持した槍だ。 「貴女が、私のサーヴァント?」 「……ランサーのクラス」 フェイトの問いに、少女、ランサーのサーヴァントは短く応えた。 ステータスは、低い。 ひょっとすると、対人戦闘においてはフェイトの方が秀でている可能性もある。 それでも、絶望や失望に似た感情を抱かないのは、やはり槍の存在。 その槍は、絶えずフェイトの目を惹く。 神秘とは、まさにその槍のことを言うのだろう。 「貴女の願いは、なに?」 儀礼めいた問い。 フェイトも感情の表現に長けた存在ではないが、ランサーはその比ではない。 心と呼べるものはないのではないかと、勘違いしてしまうほどだ。 「……願いは」 ふと、その答えを口にしなければいけないことに躊躇いを覚えた。 それでも、フェイトは一度だけ喉を震わせただけで、その願いを口にした。 ある意味ではフェイトの願いであり、フェイト自身の望みではないもの。 「母さんの、幸せ」 「……」 ランサーはその白さをそのままフェイトへと向ける。 あらゆる色を感じさせない、白さだった。 「その答えが、貴女の願い?」 「……」 「もう一度、きっと尋ねる時が来る。 貴女が、聖杯 ??? に願いを託すとき」 そのまま、ランサーと視線がぶつかった。 白雪のような、ある種の不気味なものを感じさせるランサー。 奥底の見えない言葉を紡いでいく。 フェイト自身も咀嚼できない、曖昧な記憶の答えを、真実を知っているのではないか。 そう思わせるような、不思議な少女だった。 「私 ?? は、貴女にもう一度、願いを尋ねるわ」 ランサーのサーヴァント『綾波レイ』の不可思議な瞳に。 フェイトは視線を逸らすことが出来なかった。 【クラス】 ランサー 【真名】 綾波レイ@新世紀エヴァンゲリオン(漫画) 【パラメーター】 筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:B 幸運:D 宝具:EX 【属性】 秩序・中庸 【クラススキル】 対魔力:EX 心の壁であるA.T.フィールドによって隔絶されている。 A.T.フィールドを中和しない限り、綾波レイに対して攻的な魔術で干渉することが出来ない。 【保有スキル】 A.T.フィールド:- 誰もが所有している心の壁を物理的な障壁として現界させたもの。 A.T.フィールドは中和されない限り、あらゆる攻撃を隔絶する。 一定の衝撃を超えることで貫くことも可能ではある。 誰もが持つものであるため、このスキルに神秘としてのランクは存在しない。 【宝具】 『残酷な天使の運命(ロンギヌス・オリジナル)』 ランク:A++ 種別:対使徒宝具 レンジ:2-5 最大捕捉:5人 人の魂と生命に干渉して『卵』、すなわち、『ガフの部屋』あるいは『英霊の座』へと強制的に還す力を持つ槍。 地球の生命体の始祖である第一使徒アダムと第二使徒リリスを拘束した槍、それ自体が生命である神造兵装。 他の宝具と同様に、真名を解放しない限りは能力は発揮されない。 『心よ、原始に戻れ(サード・インパクト)』 ランク:EX 種別:補完宝具 レンジ:1.083 207×1012 km3 最大捕捉:3,500,000,000 アダムとリリスが融合することで、自身の系譜である地球上の生命体の心の壁を破壊させる。 レイの魂であるリリスが持つ、A.T.フィールドを消滅させるアンチA.T.フィールドの力である。 心の壁を融解させることは人と人の垣根である、魂の入れ物である身体を喪失させることである。 すなわち、自身の心と他人の心を区切るための身体を消滅させ、『現代の多様な人類』を『原初の海』の形にする。 A.T.フィールドが隔てている心を持っている限り、この宝具からはどのような存在であろうとも逃れることが出来ない。 【weapon】 『ロンギヌスの槍』 A.T.フィールドを貫くアンチA.T.フィールドとしての特性を持ち、転じて、あらゆる魔術障壁を貫く神秘を持っている。 【人物背景】 汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン『EVA零号機』のパイロット、ファーストチルドレン。 ほとんど感情を表に出さず、寡黙で常に無表情だが、感情の表現の仕方を知らないだけである。 当初は育ての親とも言える『碇ゲンドウ』にのみ心を開いていた。 が、『碇シンジ』と出会ったことで彼とも絆を深めていき、次第に様々な感情を見せ、自我といえるものが芽生えていく。 あらゆることに対しての『経験』がなく、浮世離れしたところもある。 その正体はシンジの母親でありゲンドウの妻でもある『碇ユイ』と『第一使徒アダム』のハイブリットクローン。 何らかの原因でレイが死んだ場合、魂を多数のクローン体の新しい肉体に移し変えることで復活する。 その際に記憶はリセットされ、また、学んできた感情も白紙に戻る。 魂は『第二使徒リリス』のものである。 また、レイが心の奥深くにいるリリスと会話したり、地下の磔にされている肉体だけのリリスと会話する場面も存在する。 そして、魂が移され綾波レイになったことで、リリスだった頃の記憶はほぼ持っていない。 綾波レイとしての肉体が長く保てないのは、本来の自分の肉体ではないからとされている。 レイはリリスとしての己を取り戻し、アダムと結びつくことで『人類補完計画』を発動させた。 A.T.フィールドが喪失し、あらゆる心と心が一つになった。 その世界の中でシンジに願いを問いかけた。 その後、補完世界は再生され、人類は元に戻った。 ただ、地面に量産型EVAが十字架のように突き刺さり、 綾波レイは人としての形を喪失させ、ただ、降り積もる白雪としてシンジたちを包んでいる。 ちなみに、A.T.フィールドは超電磁スピンで壊せる。 【サーヴァントとしての願い】 綾波レイはある種の願望器の一つであり、碇シンジの願望器としての役目を果たしている。 そのため、明確な自身の願望を持たない。 【基本戦術、方針、運用法】 ロンギヌスの槍は強力な宝具だが、レイ自身の基本的にスペックが低いために直接戦闘には向かない。 サード・インパクトさえ発動してしまえば、その際にはマスターであるフェイト自身の意識も飲み込まれてしまう可能性が高い。 【マスター】 フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは 【参加方法】 コーディングされた第一使徒アダムを媒体とした儀式。 【マスターとしての願い】 母の願いを叶えるために、聖杯を持ち帰る。 【weapon】 『バルディッシュ』 「闇を貫く雷神の槍、夜を切り裂く閃光の戦斧」 インテリジェント・デバイス。 魔法の行使を補助する、発動の手助けとなる処理装置、状況判断を行える人工知能も有している。 意志を持つ為、その場の状況判断をして魔法を自動起動させたり、主の性質によって自らを調整したりする。 その上、人工知能を有しているためかインテリジェントデバイスは会話・質疑応答もこなせる。 待機状態におけるペンダント状のスタンバイフォーム、中距離状態における戦斧型のデバイスフォーム 、 近接戦闘特化した鎌状のサイズフォーム、ある一つの魔法に魔力を向ける槍型のシーリングフォームがある。 【能力・技能】 『魔導師』 魔導師として高い適正を持ち、一桁の年齢でありながら上位階級であるAAAクラスに匹敵する才能を持つ。 高い機動力を生かした中~近距離戦、射撃と近接攻撃を得意としている。 特にスピードは現時点でも本作登場の全キャラクター中で最速と言えるレベル。 また、彼女の攻撃魔法には雷を伴うものが多い。 回避力に優れる一方、防御にはやや難ありで、バリア出力はあまり高くない。 本人曰く、「速く動くこと、動かすこと」「鋭く研ぎ澄ますこと」は得意だが同時発動や遠隔操作は苦手とのこと。 『魔力変換資質』 魔法によるプロセスを踏まず、魔力を別のエネルギーに変換する事が出来る能力。 本来魔力によるエネルギーの発生には魔法というプログラムによる組み替えが必要とされるが、この資質を持つ者は魔法を介さずにエネルギーを発生させる事が出来る。 その代償なのか、この資質を持つ魔導師は純粋な魔力攻撃は不得意になる傾向があるようだ。 フェイトは魔力を電気に変換する資質を持っている。 【人物背景】 ジュエルシードの探索を続けていたなのはの前に現れた魔導師の少女、9歳相当。 「魔法少女リリカルなのは」のもう一人のヒロイン。 長い金髪をツーテールにまとめているのが印象的。 また、バリアジャケットはもとより、普段着も黒を基調としていることが多い。 母親のプレシアに言われるままにジュエルシードを集めるために地球へ現れる。 同じくジュエルシードを集めていた高町なのはとは幾度も戦いを繰り返した。 その正体は、母であるプレシア・テスタロッサが娘のアリシア・テスタロッサを失った哀しみから創りだしたクローン。 記憶も転写されており、アリシアそのものとなるはずが、実際は利き腕も魔導師としての資質も人格も異なっている。 そのため、プレシアからは失敗作と心中で憎まれている。 高町なのはとの戦闘を重ねて、意識していなかった記憶の曖昧な部分となのはの真摯な想いで動揺が積み重ねっている。 一期9話後からの参戦。 【方針】 聖杯戦争を優勝する。 BACK NEXT -016 シルクちゃん&ランサー 投下順 -014 江ノ島盾子&ランサー -016 シルクちゃん&ランサー 時系列順 -014 江ノ島盾子&ランサー BACK 登場キャラ NEXT Happy Birthday! フェイト・テスタロッサ&ランサー(綾波レイ) 000 前夜祭 018 ふ・れ・ん・ど・し・た・い
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/125.html
参加者に配られた名簿はこちら ネタバレ名簿はこちら 原作シリーズ 【高町なのは(A s)@魔法少女リリカルなのはA s】 【高町なのは(sts)@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【フェイト・T・ハラオウン(A s)@魔法少女リリカルなのはA s】 【シグナム@魔法少女リリカルなのはA s】 【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA s】 【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【ザフィーラ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【ディエチ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 ゲッターロボ昴氏の作品 【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】 【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】 リリカル龍騎氏の作品 【八神はやて(A s)@仮面ライダーリリカル龍騎】 【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎】 【神崎優衣@仮面ライダーリリカル龍騎】 【アーカード@NANOSING】 【アレクサンド・アンデルセン@NANOSING】 【インテグラル・ファルブルケ・ヴィンゲーツ・ヘルシング@NANOSING】 【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】 GX氏の作品 【ティアナ・ランスター@リリカル遊戯王GX】 【遊城十代@リリカル遊戯王GX】 【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】 【万丈目準@リリカル遊戯王GX】 【天上院明日香@リリカル遊戯王GX】 なのは×終わクロ氏の作品 【八神はやて(sts)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】 【新庄・運切@なのは×終わクロ】 【ブレンヒルト・シルト@なのは×終わクロ】 【エネル@小話メドレー】 反目のスバル氏の作品 【ギンガ・ナカジマ@魔法妖怪リリカル殺生丸】 【殺生丸@魔法妖怪リリカル殺生丸】 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反目のスバル】 【C.C.@コードギアス 反目のスバル】 【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反目のスバル】 【シャーリー・フェネット@コードギアス 反目のスバル】 【セフィロス@リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 【アンジール・ヒューレー@リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 仮面ライダーリリカル電王sts氏の作品 【エリオ・モンディアル@デジモン・ザ・リリカルS&F】 【アグモン@デジモン・ザ・リリカルS&F】 【ギルモン@デジモン・ザ・リリカルS&F】 リリカルTRIGUN氏の作品 【クロノ・ハラオウン@リリカルリリカルTRIGUNA s】 【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA s】 【ミリオンズ・ナイブズ@リリカルTRIGUNA s】 メビウス×なのは氏の作品 【ユーノ・スクライア@L change the world after story】 【L@L change the world after story】 【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】 マスカレード氏の作品 【フェイト・T・ハラオウン(sts)@仮面ライダーカブト】 【矢車想@仮面ライダーカブト】 【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【泉こなた@なの☆すた】 【柊かがみ@なの☆すた】 【柊つかさ@なの☆すた】 ARMSクロス氏の作品 【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】 【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3449.html
―――9 クラナガン市第11区ホルテンマルス通り。 陸上部局機動一課第18師団226陸士部隊は、スィンドル及びドロップキックなどのドローンたちと、文字通り死闘を演じていた。 胸部の砲塔を展開して次々と砲弾を撃ち込んでくるドローン部隊に対して、陸戦魔導師たちはバリアやシールドだけでなく、時に素早く移動し、 時に建物や車を盾代りにして攻撃を避ける。 そして、砲撃が止むのと同時に部隊全員の攻撃魔法をドローン一体に集中させて確実に倒して行くという、ゲリラ戦的な方法で本局ビル方面 へ侵攻するドローン部隊を足止めしていた。 しかし、ドローン部隊と陸士部隊の火力と装甲の差は如何ともし難く、陸士部隊は後退に次ぐ後退を強いられていた。 「くそっ、何なんだあいつらは!!」 ワゴン車の陰に隠れている、恐竜のような顔立ちのと鱗の肌をした陸士が、デバイスにカートリッジを装填しながら悪態をついていた。 「何が大型ガジェットドローンだ、車に変形する人型GJなんて見たことも聞いた事もねぇぞ!」 その隣でベルカ式ポールスピア型デバイスを構えた、脳が見える透明の頭をした三本指の陸士が、攻撃が止んだのを機に頭を少し上げると、 ドロップキックがこちらへ砲口を向けるのが見えた。 「おい、逃げろ!」 仰天した表情の陸士が、同僚の腕を引っ張って歩道へ逃げ出すのと同時に砲弾が車を襲い、直撃を受けた車が大爆発して路上を転がって行く。 路地に伏せて爆発を避けた、鶏冠のついた四本の大きな皺の走った頭をした指揮官を務める陸曹は、陸士二名を路地に呼び寄せると、回復した ばかりのモニターに向かって怒鳴りつける。 「こちら陸士226部隊、これ以上は持ち堪えられそうにないぞ! 増援はどうしたんだ!?」 モニターの向こうでも、通信担当の士官が、同じくらい大きな声で怒鳴り返してきた。 「現在EW-TT隊がそちらに急行している、もう少し我慢してくれ!」 「了解した!」 陸曹はそう言ってモニターを切ると、懸命に闘っている部隊へ振り向いて笑いながら声と念話の両方で呼びかける。 「応援が来るぞ! 後ちょっとの辛抱だ、踏ん張れ!!」 その言葉に力を得た魔導師は、了解の意を示す陸士部隊共通の掛け声を一斉に上げた。 「ウーオッ!」 戦車に蜘蛛のような多関節脚を六本くっ付けたような形の、“歩行戦車型アインヘリアル(Einherial Walking―Tank Type 略称EW-TT)” 五両は、本局ビルNMCCより指示のあった場所へ急行しつつあった。 「前方に爆炎を確認!」 前席の、亀の甲羅のような頭に虎の様な牙を口から生やしたパイロットからの報告に、穴のような耳と肩に棘を生やした、部隊長を務める一尉の 階級章を付けた士官がペリスコープ用のモニターを開く。 すると、ロボット軍団と追い詰められつつある陸戦魔導師部隊の激しい攻防戦が、目の前に映し出された。 「ありゃ一体何だ?」 今まで見た事のない人型ロボット兵器に、車内の乗員がざわめき始める。 「落ち着け!」 部隊長が周囲の窘めるように大声を上げる。 効果覿面。その一喝に、車内のざわめきが水を打ったように静まり返った。 「何であれ目の前の敵は叩き潰す、只それだけの事よ! カートリッジロード!」 一尉の指示に、砲手が155ミリ砲弾サイズのカートリッジを砲型のデバイスに装填すると、EW-TT車体真下の路面に、ミッド式魔方陣が展開 される。 「来たぞ! 増援部隊だ!!」 EW-TTを見た陸士が仲間たちに大声で呼び掛けると同時に、隊長の眼前にEW-TTから空間モニターが開かれる。 「こちら機動一課 第89師団 陸士209部隊 重魔導車両部隊だ。これから敵GD部隊に対して攻撃を行う、至急後ろに退ってくれ」 連絡を受けた陸士部隊は、ロボット軍団に対して牽制の攻撃魔法を放ちながら、EW-TTの後ろへ後退する。 「陸士部隊の後退完了、目標までの距離、約百五十百メートル!」 土偶のような、縄のよれたような皺だらけの顔に、上唇にサーベルタイガーのような二本の牙を持つ観測手兼砲手の報告を受けて、一尉は矢継ぎ 早に部隊へ指示を出す。 「全隊、照準を本車真正面の人型GD部隊中央に!」 一尉の指示を受けて、EW-TTの全車の照準がスィンドルたちの中央部にセットされる。 こちらに向けて歩行戦車がやって来た事に気付いたドローンは、攻撃目標を目前の陸士部隊からEW-TTに変更する。 「敵部隊より攻撃が来ます!」 砲手から報告を受けた一尉は、即座に命令を下す。 「プロクテション!」 デバイスがフィールドを張るのと同時にスィンドルとドロップキックがEW-TT目掛けて一斉に砲撃する。 だが、砲弾はフィールドに弾かれるか、突き抜けても車体を貫く程の力はなく、虚しく跳ね返るばかり。 「ディバインシューターセットアップ!」 隊長の号令一下、砲手がデバイスのチャンバーレバーを引くと、EW-TTの砲口に紫色の丸い光が現れる。 「ディバインシューター、セット完了!」 砲手の言葉を受けて、隊長はEW-TT全車両に命令を下した。 「撃て(シュート)!」 その声と同時にEW-TT全車からまばゆい光の球が放たれた。 ドロップキックとスィンドルたちは回避行動をとるが、迸る魔力が嵐となってドローンたちを巻き込んで行く。 回避が間に合わなかったドローンのボディを突き抜け、周囲の仲間を巻き込み、吹き飛ばしながら、ディバインシューターはしばらくの間路上を荒れ 狂っていた。 魔力の嵐が収まり、舞い上がっていた誇りが落ち着くと、魔導師たちをあれ程苦しめていた二足歩行の巨大ロボットの大群が、今や物言わぬ スクラップとなって横たわっていた。 「ほう」 メガトロンは腕を組んで感心したように頷きながら言う。 「エネルギーを収束させて、強力な弾丸として撃ち出す…か。ひ弱な炭素生物にしては中々知恵が回るようだな」 「ですが所詮はチビどもの玩具、我々が本気を出せば一捻りですよ」 スタースクリームがそう言って唾でも吐くように口からオイルを飛ばすと、メガトロンは腕を挙げて窘めるように言う。 「その通りだが相手を甘く見過ぎると、思わぬところで足元を掬われるぞ」 メガトロンは次に、マイクロ波による無線通信でクラナガン市街へ呼びかける。 “ボーンクラッシャー” メガトロンから指名された大型の質量兵器用特殊工作トラックは、呼びかけを無視して百キロ以上のスピードで市内を暴走していた。 前方の車を自らの巨体で弾き飛ばし、時には建物に体当たりして崩壊させ、街灯や人間をボウリングのピンのように轢き倒していく。 車体のアームで乗用車を掴み、攻撃魔法を撃ち込みながら追って来る空戦魔導師部隊目掛けて投げつけるなど、傍若無人の限りを尽していた。 “ボーンクラッシャー、聞こえてる筈だ、返事をしろ!” メガトロンからより厳しい口調で詰問された時、ボーンクラッシャーは初めて返事をする。 “聞こえている、何か?” ボーンクラッシャー返事が来ると、メガトロンはクラナガン市街の地図を転送しながら指示を下す。 “敵が戦車を担ぎ出してきた、ドローンどもが苦戦しとるから片付けて来い。 場所は第11区のホルテンマルス通りだ” “了解” ボーンクラッシャーは簡潔に答えると、更に加速して魔導師たちの追撃を振り切り、目的地へと向かった。 NMCCの超大型空間モニターにはクラナガン市街の地図が表示され、市街各所で繰り広げられている陸・空戦魔導師部隊と正体不明のロボット 軍団の戦闘状況が、青と赤の矢印で表示されている。 その周囲を取り囲む無数の空間モニターには、市街戦の映像が映し出されていた。 ロボットからの砲撃を受けた魔導師が、木の葉のように吹き飛ばされるのが映った時、なのははレイジングハートのチェーンを強く握りしめた。 「焦るな」 なのはの焦りを察知したゲンヤが、諭すように言う。 「切り札ってものは、やたらと見せびらかすもんじゃねぇ、ここ一番って時に切るからこそ活きるんだ」 ゲンヤの言葉に頷き、内心の葛藤を必死に闘いながらなのはは答える。 「分ってます、分ってますけど……っ」 今度は長官が冷徹な口調でなのはに言った。 「自分一人で総てを背負えると思っているのか?」 自分でも思い上がりと意識している事を冷静に指摘された事に、なのはの表情が怒りを帯び、口調が自然と荒くなった。 「そんなつもりは……!」 「なのはちゃん!」 はやてがそう言って腕を抑えなければ、なのはは長官に食い掛っていたところであろう。 「も、申し訳ございません…!」 我に返ったなのはは、自分がしでかしかけた事の重大さを悟り、慌てて長官に頭を下げた。 「いや、いいんだ。気にしないでくれ」 長官は笑いながら手を挙げてなのはの謝罪を受け入れると、自分の眼前にあるモニターに目を向けながら小さくつぶやいた。 「私自身も同じ思いだよ、長官としてもっと出来る事があるのでは…? とな。 だが、実際に人手はあまりにも足りなく、示せる選択肢は極めて限られる…。 まったく、この世は思い通りならな事ばかりだな」 この呟きをゲンヤは聞いていたが、彼は何も言わなかった。 デモリッシャーの車輪をかいくぐりながら、チンクは苦内型の固有武装“スティンガー”を続けざまに投げつける。 総てデモリッシャーの顔で炸裂するが、相手は怯む気配すら見せない。 「チンク姉、だめだ。でか過ぎてあたしらの攻撃魔法じゃ埒が明かない!」 「あきらめるなノーヴェ!」 ノーヴェが歯ぎしりするノーヴェを叱咤するが、チンク自身も口の中で小さく呟いた。 「とは言え、こちらも手詰まりか…」 “チンク姉、聞こえる?” ディエチから念話で呼びかけられたチンクは、デモリッシャーの攻撃圏から一旦離脱し、等距離を取って監視しながら返事する。 “どうしたディエチ?” チンクからの問いかけに、まるで躊躇うかのように少し間が空いた後、ディエチが念話を再開する。 “あの化け物は…悪いけど、多分私達の手には負える相手じゃないと思う” チンクも悔しそうに歯噛みしながら、ディエチの意見に同意する。 “そうかも知れん、だが他の部隊も手が回らない以上、我々だけで対処するしか…” その返答を予期していたのだろう、ディエチからの返答はチンクの考えを首肯しながら、自分の考えを伝えるものだった。 “うん、そうだね。それで…倒せなくても、もしかしたら動きを封じる事が出来るかも知れない。 チンク姉、そいつを何とか海側におびき寄せられない?” “難しい事を言ってくれるな…” チンクは苦笑しながらも、ディエチに了承した旨を伝える。 “分かった、何とかやってみる” チンクが答えるのと同時にデモリッシャーの後頭部が開き、中から数十発のミサイルが一気に発射された。 「いかん! 全員散開!!」 それを見たチンクが大声で指示を出す。 空へ上がったウェンディとチンク、そして地上を全力で疾走するノーヴェ目掛けて、ミサイルが獲物に群がるピラニアの如く追ってくる。 「誘導弾ッスか!」 逃げ切れないと悟ったウェンディは、振り向くとISを起動させる。 “フローターマイン” デバイスが声を発すると、ピンク色に光る数十個の魔力球がウェンディの前にカーテン状に展開される。 ミサイル群が突き抜けようとすると、球は一斉に爆発を起こし、そこにまともに突っ込む形なったミサイルも全弾誘爆を起こした。 「ウェンディ、無事か?」 スティンガーでミサイルを防いだチンクが、ウェンディの横で並列飛行しながら尋ねる。 「大丈夫ッス!」 ウェンディが親指を挙げて笑顔で返答するのを確認すると、チンクは次に地上へ眼を向ける。 「ノーヴェは?」 それに応えるかの様に、エアライナーに乗ったノーヴェがこちらへ向けて昇って来るのが、二人の眼に写った。 「敵GD部隊、完全に沈黙!」 砲手と各車両から同じ報告を受け取った部隊長は満足げに頷く。 「ここからもっとも近い戦場はどこか、本局に問い合わせてくれ」 指示を受けた通信士が本局と連絡を取り始めた時、運転士のモニターに突然“未確認車両接近中”という警告が表示された。 「隊長、前方より所属不明の車が一台近付いて来ます」 運転士は自分のモニターの映像を、部隊長のところに転送する。 そこには、危険物処理や災害現場の後片付け用に陸士部隊へ配備されている大型特殊車両が、ドローンの残骸を掻き分けながら近付いて来る のが映っていた。 「こちらは機動一課 第89師団 陸士209部隊所属の重魔導車両部隊である、貴方の所属を知らせよ」 EW-TTからの問いかけに返答せず、特殊車両は無言のまま近付いて来る。 「全車、ディバインシューターセットアップ!」 指示を受けたEW-TT全車の足元に、ミッド式魔方陣が再び展開される。 「撃て!」 ディバインシューターが発射されると、特殊車両は弾道を予測したかのように、反対車線へ移動して、魔力弾の直撃を避ける。 先程だったら、直撃しなくとも衝撃波で吹き飛ばされる筈だが、特殊車両はそんなもの存在しないかのように、悠然と走っている。 「なにっ!?」 その様子を見ていた部隊長が驚きの声を上げる。 まるでそれを合図としたかのように、特殊車両は急加速してEW-TTとの距離を瞬く間に詰めてくる。 「全車後退!」 部隊長がそう怒鳴るのと、特殊車両が変形を始めて“デストロン軍団破壊兵ボーンクラッシャー”の正体を現したのは同時であった。 ボーンクラッシャーは、今や巨大な拳と化した障害物及び危険物除去用のアームを上から叩き付け、一両目のEW-TTをまるで蠅でも叩くかの ように苦もなく潰す。 潰した車両を掴み上げると、左側のEW-TTに叩き付けて横にひっくり返し、次に正面の三両目に投げ付けて擱座させる。 「ディバインバスター準備!」 目まぐるしく変わる状況に、部隊長は覚悟を決めた表情で指示を下す。 四両目を撃破したボーンクラッシャーが隊長機を掴んだ瞬間、部隊長は攻撃命令を出した。 「撃て!」 零距離で撃ち出された砲撃がボーンクラッシャーを直撃、まばゆいばかりの閃光と埃が舞い上がり、辺りを覆い尽くす。 車内の全員が固唾を呑んで見守る中、埃が晴れて来ると、EW-TTの必死の反撃を嘲笑うかのようにボーンクラッシャーが悠然と立っていた。 「そんな…!」 部隊長が絶句すると同時にボーンクラッシャーが再びEW-TTを掴んで軽々と持ち上げる。 車内の乗員は全員シートベルトを付けていたので放り出される事はなかったが、突然天地がひっくり返った事に恐慌を来たす。 ボーンクラッシャーは車両を軽々と持ち上げると、路上で民間人を退避させていた陸士部隊目掛けて放り投げた。 「こちらボーンクラッシャー。邪魔者は総て片付け―――」 結果は見るまでもないと判断して報告を始めたボーンクラッシャーは、いつまでも重車両が路上に激突する音が響かない事に不審を抱き、途中で 報告を止めて振り返った。 先程までドローン達と戦っていた魔導師部隊は、EW-TTが後を引き継いで以降通りに残って戦闘を眺めていた民間人の避難誘導を行っていた。 ボーンクラッシャーが車両部隊を潰し始めると、隊長は民間人の避難と同時に、手の空いた陸士達を、破壊された車両の乗員の救助に向かわせ ようとするが、その暴れっぷりに近づく事すら出来ない。 このままでは自分達もやられる。 そう判断した隊長は民間人の避難が完了次第、陸士達も退却するよう、断腸の思いで命じる。 最後の家族連れを連れて隊長達が退避しようとした時、ボーンクラッシャーが放り投げた車両が、こちらへと飛んで来るのが見えた。 「逃げろ!」 呆然として動けない家族連れと部下達に怒鳴りながら、我が身を犠牲にする覚悟で隊長はプロテクションを展開する。 その時、彼の横を猛スピードで人影が横切り、跳び上がるとEW-TTに飛び付いた。 路上に十数メートルの擦過痕を残し、重戦車並の重さのEW-TTを人影は一人で受け止めながら、隊長達の眼前で停止する。 白のジャンパーと短パン型のバリアジャケットに、ローラーブーツにハンドガード型のデバイスを装着した人影は、隊長に振り向いて尋ねる。 「機動五課 第58師団 陸士556部隊所属のスバル・ナカジマです。怪我はありませんか?」 問い掛けに隊長が頷くと、スバルはモニターを開く。 「シャマル先生、スバルです。第11区ホルテンマルス通りで民間人数名と陸士部隊を救助。負傷者もいる模様です。至急後方への搬送をお願いします」 「分かったわ。今、そちらに向かうから」 モニターから声がすると同時にスバルの横で緑色に輝く鏡が出現し、中から緑のロングドレスのバリアジャケットを着たシャマルが出て来た。 「次元部局タイコンデロガ医務官のシャマルです。皆様、こちらから避難して下さい」 シャマルの指示に従って家族連れは鏡の中へと入って行き、一方スバルはEW-TTのドアを力任せに引き開ける。 「大丈夫ですか?」 スバルの呼び掛けに、部隊長がシートベルトを外しながら答える。 「私は大丈夫だ、だが、部下が…」 スバルと部隊長が怪我をした乗員を外へ運び出していた時、砲弾が頭上のビルの壁を穿ち、破片が擱座したEW-TTの車体に降りかかる。 攻撃のあった方をスバルが見ると、新たにやって来たドローンたちが、砲撃しながら近付いて来るのが見えた。 「シャマル先生、敵GD部隊は私が食い止めますので、怪我人をお願いします」 スバルがそう言うと、シャマルがEW-TTの所へ駆けて来る。 「言っとくけど、危険と判断したら即座に撤収しなさい」 シャマルの言葉に、スバルは敬礼で返した。 EW-TTからこちらへ向かって来るスバルに、ドローン達は砲口を向ける。 雨あられと撃ち込まれる砲弾をスバルはジグザグ運動で回避し、通りの左端に立っていたスィンドルの足元に蹴りを入れて仰向けにひっくり返す。 隣にいたドロップキックが砲撃するが、スバルは跳び上がってそれを回避し、弾は倒れたスィンドルを木っ端微塵に吹き飛ばす。 スバルはそのままドロップキックの肩に飛び乗ると、背中をナックルダスターで殴り付ける。 後ろからいきなり強く突き飛ばされる形になったドロップキックは、砲を乱射しながらグルグル回り、周囲のドローンを次々とスクラップにしていく。 背中にいるスバル目掛けて、ドローン達が一斉に飛び掛かる。 レッゲージがドロップキックの背に飛び付き、ニ体は縺れ合って路上に倒れる。 しかし、その時にはスバルは再び宙を舞っており、スィンドルの頭上に降り立つと脳天にリボルバーキャノンを叩き込んで粉々に粉砕する。 火花を放ち、身体を小刻みに震わせながら倒れたスィンドルの上に、スバルは悠然と降りる。 後方から別のドローン達がやって来て砲口を開いた時、ボーンクラッシャーがその内の一体を拳で殴り倒す。 “手を出すな! こいつは俺の獲物だ!!” ドローン全員に無線で命令すると、ボーンクラッシャーはスバルへ挑むように、真正面から対峙する。 ドローンを殴った事と威圧感たっぷりに睨み付ける姿。 相手をガジェットドローンと同様の自動兵器と考えていたスバルは、そのあまりに人間的な反応に違和感を覚える。 と、ボーンクラッシャーはスバルに考える暇を与えさせないかのように、足元に転がっていたドローンの残骸を持ち上げて投げ付けてくる。 スバルは盛大なスキール音と共に急発進して残骸を避けると、走りながらカートリッジを再度装填する。 次々と投げられて来る残骸を左右やジャンプして避け、時には真正面に来たものを殴り落としながら、スバルはボーンクラッシャーへと迫る。 ボーンクラッシャーの方も路面の舗装を盛大に巻き上げながら急発進する。 進路上にある残骸や瓦礫を弾き飛ばしながら、ボーンクラッシャーは鉤爪をスバル目掛けて振り下ろす。 スバルは左にステップして回避するが、そこへボーンクラッシャーの右拳が襲ってくる。 それに対してスバルは拳の来る方向に身体を捻らせて攻撃を受け流し、勢いを殺さずに裏拳を肘の辺りに叩き込む。 勢いを流された上に攻撃をまともに受けたボーンクラッシャーは、バランスを崩して横向きに倒れ、その際拳が左側にあるオフィスビルの壁面を破壊する。 スバルは後退して、降って来る建物の残骸を避ける。 埃が濛々と巻き上がって姿が見えなくなったボーンクラッシャーに向けて、スバルは警告する。 「こちらは時空管理局陸上部局機動五課第778師団陸士71部隊所属のスバル・ナカジマです。 当該大型GDに搭乗しているパイロットに警告します、直ちに武装を解除し、GDより降りて降伏して下さい」 次の瞬間、土煙の中からボーンクラッシャーが飛び上がり、スバルの目の前に降り立つ。 「クソ喰らえだ! 止められるもんなら止めてみやがれ!」 中指を突き立て、ミッドッチルダ語で挑発するボーンクラッシャーに、スバルは面食らった表情で素っ頓狂な声を上げる。 「しゃ、喋った!?」 ボーンクラッシャーは、唖然とするスバルを嘲笑う。 「お前らの言葉で話した事がか? 俺に言わせれば、手前ェら単純な炭素生物が言葉や道具を使う方が驚きだがな!」 スバルはその挑発には乗らず、相手がどんな動きを見せてもすぐ対応出来るように、構えを取る。 そんなスバルの様子に構わず、ボーンクラッシャーは言葉を続ける。 「スバル・ナカジマと言ったな? 冥土の土産に教えてやるぜ、俺はデストロン軍団破壊兵ボーンクラッシャーよ! よぉーく覚えとけ!!」 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3524.html
その日、機動六課のメンバーはホテルアグスタに展開していた。 もちろんパーティーを開くためではない。 今日開かれるオークションで レリックが出品される可能性があるという情報を得たからである。 前回の山岳列車襲撃事件を振り返っても この情報を掴んだスカリエッティが動くことはほぼ確実だろう。 彼の動きに備えるため、機動六課はホテルの警備任務についていた。 「ヴィータ、いい加減気持ちを切り替えろ。 そんな状態を続けていてはフォワードの4人にも示しがつかんぞ」 作戦開始前から仏頂面を崩さないヴィータを ウンザリした顔でシグナムが諭した。 時間は作戦の前日に遡る。 山岳列車襲撃事件におけるジルグの単独行動は 当然問題となっていた。 わざわざ演技をしてまで味方を欺いた上での事である。 とはいえフォワード陣のジルグに対する感情は そこまで悪化した訳ではない。 ティアナなどはシャーリー同様「この人はこういう人だから」 という認識で既に諦めの境地に至っており、 スバルは自分達があれだけ苦戦した相手をあっさり退けたジルグに 素直に尊敬の眼差しを向けるようになっていた。 エリオとキャロはやはり「どうせなら初めから自分達と行動してくれれば…」 という感情もあるにはあったが、演技の後とはいえ、 飛行魔法も使えないのにあの高空から移動中の列車の開いた穴に向かって強襲を仕掛けた事は 作戦前に抱いた侮蔑の感情を払拭して余りあるものがあった。 だが隊長陣にとっては『それはそれ、これはこれ』である。 一応現場における直属の上司に相当するなのはなどは 作戦直後とは打って変わって、どのようにジルグと接するべきか悩んでいたし はやては今後の作戦においてジルグをどう扱うかが頭痛の種となっていた。 その状況を本人達以上に苦々しく思っていたのははやての配下であるヴォルケンリッター達 特に現場での暴れっぷりを直接見ていたリインフォースに変わって いまや反ジルグの急先鋒となっていたヴィータである。 もともとヴィータは過去の戦いや事件を通じて、なのはとは特に仲が良い。 そして他のヴォルケンリッター同様、はやてには絶対の忠誠を誓っている。 その二人を自分勝手な行動で振り回して悩ませているジルグは 陸士第108部隊の味方撃ち事件の事を差し引いても許せるものではなかった。 そしてその感情が、ホテルアグスタにおける任務の前日に ついに爆発したのであった。 「あぁ? なんだって?」 ヴィータが険のこもった眼差しをジルグに向けた。 現在は訓練時間中である。 これまでと同様、フォワード陣とは別メニューで 訓練とエルテーミスの調整を行っていたジルグの前にヴィータが姿を現したのである。 最初、ヴィータが姿を現してもジルグは全く意に介せず訓練を続行していた。 『無視された』と感じたヴィータがジルグを怒鳴り声で呼びつけると 初めて存在に気づいたかのようにヴィータの元に歩みを進めるジルグ。 「おいジルグ、前からそうだが上司に対する態度がなってねーな?」 「…………」 普通ならヴィータはこんな事は言わないだろう。 彼女は本来快活明朗な性格だ。 だが今は目の前の男に対する嫌悪感と、そこから派生したイラつきで冷静さを欠いていた。 いつものようにすました顔を崩さないジルグに、ヴィータのイライラはさらに募る。 「毎日毎日デバイスの調整だけじゃ腕もなまるだろ? あたしが稽古をつけてやるよ」 ヴィータがここに来た目的は単純だ。 体育会系にはありがちのかわいがりである。 『早めにこの男の鼻っ柱を折っておかないと、この先もどんどん増長して止められなくなる』 一応、ヴィータなりに六課の今後を考えての行動であり ジルグの元に向かったヴィータを、他のヴォルケンリッターは止めずに黙認した。 だが─── 「お断りします」 この一言がヴィータの機嫌をさらに損ねることになったのである。 「なんだ、ビビってんのか?」 ヴィータの挑発にも、ジルグは眉一つ動かさない。 「まだこのエルテーミスは、分隊長殿を相手に出来るほど使いこなせてはいませんので」 台詞だけなら殊勝である。 だが、笑みすら浮かべた表情で言っても何の説得力もない。 ヴィータからしてみれば『眼中にない』とでも言われていると勘違いしてもおかしくない態度であった。 ジルグ本人としては単純にめんどくさかったから、というのが最初の答えの理由である。 実際のところ、エルテーミスはまだまだ様々な機動を取ることが可能と思っていたし その為の訓練をしているところに、わざわざ分隊長殿がちょっかいを仕掛けてきたのは 甚だ迷惑なことであった。 それに、ジルグは自身の『戦闘技術』に自負を持ってはいたが 『まともに戦う』事になった場合、 なのはやフェイトはもちろん、ヴォルケンリッターにも自身の『戦闘能力』自体は劣ると考えている。 魔力ランクを見れば一目瞭然だがヴィータはAAA+であり、ジルグはA+だ。 隊長陣は普段魔力にリミッターをかけられているとはいえ この世界の戦い方におけるキャリアは、つい最近この世界に現れたジルグの比ではないし シンプルな魔力合戦となった場合、はじめからジルグに勝ち目はない。 だから、実際に敵対した場合ならともかく 今は新しい玩具である『エルテーミス』の調整を楽しんでいるジルグからすれば ヴィータの申し込みは単なる面倒事でしかなかったのだ。 だが、二言目の台詞と自身の態度がヴィータに対する挑発となり、 結果逆上させる事をわかった上で言っているあたり ジルグは自身が認めるように『ガキ』なのだった。 「……これは分隊長命令だ、あたしと勝負しろ。ジルグ」 「了解」 動揺する雰囲気など微塵も見せず、平然と了承するジルグ。 「場所を移すぞ、ついてこい」 そう言ってヴィータが向かった先は…… 「ヴィータちゃん!?」 「よう、なのは。新人どもの訓練も一段落したみてーだな」 突然現れたヴィータとジルグに戸惑った声をあげるなのは。 「う、うん。今終わった所だけどどうしたの? ジルグさんまで連れて……」 不穏な空気を察したのか、なのはの顔に不安の影がよぎる。 「これからあたしとジルグで模擬戦をする。 ジルグもデバイスの調整ばかりじゃ腕もなまるだろうし、新人共にゃいい参考になるだろ。 なのはは立会いと訓練の開始役をしてくれ」 ヴィータの言葉になのははその意図を察し止めようとする。 「だ、だめだよ! ジルグさんのデバイスはまだ調整中なんだし さっきまで訓練してたんでしょ? そんな状態でヴィータちゃんと模擬戦なんて……!」 なのはの抗議は予想のうえだ。 だからこそヴィータは先にジルグの元へ向かったのだ。 「ジルグの方は了承してるぜ」 上官命令として引っ張ってきたのはヴィータだ、ジルグがそれを言えば模擬戦の話は消滅する。 ヴィータはそこを危惧したがジルグは 「そういうわけなのでよろしく」 とあっさりと承諾した。 なのはは未だ渋っているが、本人達はすでに開始位置に歩みを進めている。 フォワード陣も、初対面以外でジルグの戦いを直接見るのは初めてだ。 しかもその相手は、自分達もその力を良く知っているヴィータである。 興味津々の面持ちで開始の合図を待っている。 こうなれば後はなるようにしかならない。 なのはは観念し、せめてジルグが軽傷で終わるように祈りながら開始の合図を下した。 「じゃあ、二人とも用意はいいね?……はじめ!!」 まずはセオリーどおり、ジルグは後方に下がり距離をとりながらライフルをヴィータに向けて連射する。 ヴィータはそれを最低限の動きでかわし、 かわしきれない弾はグラーフアイゼンを盾にして防ぎながら魔方陣を展開する 「シュヴァルベフリーゲン!」 ヴィータの周囲にいくつもの大型の魔力弾が形成され グラーフアイゼンがそれをジルグに向かって打ち込む。 そしてヴィータもジルグへの距離を詰めるべく滑空する。 「……!」 自分に向かって来る魔力弾を冷静にライフルで迎撃するジルグ。 単体の破壊力ではジルグの魔力弾に勝るであろう大型魔力弾の中央を正確に穿つことで魔力を四散させ そしてそのまま向かってくるヴィータにも魔力弾を斉射する。 それを防ぎながらジルグとの距離を詰めてゆくヴィータ。 「さすがに狙いが正確だな、だけど…… 狙いが正確すぎるってことは逆を言えば来る位置が予測できるってことさ!!」 そう叫ぶとヴィータはさらに距離をつめ、 「いくぜアイゼン!」 『Raketenform』 空中に飛び上がり、ジルグに向かって魔力による加速を増したグラーフアイゼンを振り下ろす。 ヴィータの18番であるラケーテンハンマーが唸りをあげて 後方へステップして逃れようとするジルグに襲い掛かる。 「!?」 だが完全に捕らえたと思っていた一撃は空を切る。 ヴィータの一撃が当たる直前に、4箇所の姿勢制御デバイスを全開で前方に出力 瞬間的に後方へ移動することで正に間一髪で必殺の一撃をかわしたのだ。 そのまま間をおかずにヴィータへライフルの攻撃を浴びせるジルグ 「チッ!」 だがヴィータも至近距離から放たれる高威力の魔力弾に対して 怯まず真っ向からプロテクションを絡めたグラーフアイゼンで受け止め、さらに距離を詰める。 確かにジルグの射手としての技量は高い。 だが先程ヴィータも言ったように『狙いが正確すぎる』故に 来るとわかっていればヴィータほどの戦士であるなら 直線移動しかしない魔力弾を防ぐこと自体はそこまで難しいものではない。 誘導弾で後ろから狙われる可能性もあるが 逆を言えばわざと狙いを外した時点でその意図は看破できる。 加えてこの距離はヴィータの間合いである。 銃身の長いロングライフルは近距離においては取り回しが難しく、小回りが利かない。 事実、近距離戦を挑んでからジルグがライフルを発射する回数は激減していた。 ヘタに撃とうとすれば、ジルグ自身には当たらなくとも グラーフアイゼンの重い一撃が銃身の長いロングライフルを破壊するだろう。 そしてジルグは後方に下がって間合いを取ろうとするが、 跳躍補正デバイスは背面にあり後退には使用できない。 後方に下がるには姿勢制御デバイスだけしか使えないのだ。 ギリギリでヴィータの攻撃をかわし続けてはいるものの、完全にジリ貧状態であった。 何度目の事か、僅かに間合いをとったジルグがライフルを構えヴィータに魔力弾を発射する。 だが、その弾道を見たヴィータは勝利を確信した。 狙いはヴィータを外れている、弾道も今までに比べれば僅かに遅い。 焦れたジルグがついに誘導弾を放ったのだ。 これまでは高威力の魔力弾に対し、グラーフアイゼンを盾にした上で プロテクションを発動させる必要があった。 そうでなければ、いかにグラーフアイゼンが頑丈といえどもあの攻撃を耐え切ることは出来ない。 だが、後方から自分を狙うための誘導弾であれば 今この瞬間のプロテクションの発動や防御の動作は不要である。 誘導弾といえどもあの弾速ではヴィータを通り過ぎた後 彼女の背中に着弾するまでには十分すぎるほどの時間がある。 これまで届かなかった『後一歩』の間合いに踏み込める。 ヴィータは一気に間合いを詰め、横薙ぎで仕留めようとグラーフアイゼンを振りかぶった。 「なっ!?」 驚きの声をあげたのはヴィータの方だった。 ヴィータが踏み込むと同時に、ジルグは跳躍補正デバイスを出力させて 一気にヴィータへの間合いを詰めたのだ。 ヴィータの眼前にしてやったりという表情をしたジルグが迫る。 だが、ヴィータとて歴戦の猛者であるヴォルケンリッターの一人だ。 ヴィータはあえてそこで止まらずに、無理やりラケーテンハンマーを振り切ってみせた。 ジルグのいる位置はグラーフアイゼンの柄の部分である。 本来の威力を与えることは当然出来ない。 だが、それでも当たりさえすればジルグに対しては十分なダメージを与える事が出来る。 そして何より二人の距離は近すぎてライフルは使えない。 「でえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」 その場にいた誰もがヴィータの勝利が決まったと思っただろう。 だが─── 「あ………?」 グラーフアイゼンを振り切ったヴィータの顔面に、ジルグのライフルが突きつけられていた。 フォワード陣は何が起こったのか理解できず、一様に呆けた表情を見せている。 ジルグが何を行ったかを理解しえたのは、 なのはと模擬戦をモニターしていたシグナムとザフィーラだけであった。 「今の模擬戦、どう見る?」 シグナムに尋ねるザフィーラ。 「半分はヴィータの油断だ。だが──」 とシグナムは続ける。 「『普通に戦って』あの男に勝つのは私でも難しいだろうな」 そう言ってシグナムはモニター室を出て行った。 その瞬間に何が起こったのか? 自分に迫るグラーフアイゼンの柄に対し ジルグは姿勢制御デバイスと跳躍補正デバイスの全てを動作させ 身体をデバイスの複雑な出力方向制御のみに任せて 体勢を自身に向かってくるグラーフアイゼンの柄を軸に回るように変化させた。 そして、急激な速度でまるで棒高跳びの如く、柄をなめるようにかわしたのだ。 そのままジルグは左手を地面につけ、逆立ちの状態から右足の姿勢制御デバイスを全開で出力させ ヴィータの脳天に向けて凄まじい速度の蹴りを降らせた。 かろうじて頭への直撃を避けたが、蹴りはヴィータの右肩に叩き込まれる。 思わず片膝をついたヴィータの目の前には 逆立ちでヴィータの肩に蹴りを叩き込んだまま左手一本で自分の身体を支え 右手のライフルを眼前に突きつけているジルグがいた。 誘導弾は跳んでこない、という事はあの魔力弾は誘導弾に見せかけたただの射撃 つまりここに至るまでのプロセスは全て…… 「……ハッ! そ、そこまで!模擬戦終了!!」 我に返ったなのはが慌てて模擬戦の終了を告げる。 後一歩遅かったらジルグがヴィータにライフルを発射していたかもしれない ギリギリのタイミングであった。 「さて、訓練は終了らしいのでこれで失礼いたします。ヴィータ分隊長殿」 軽やかにヴィータの肩に乗せられた足を下ろして立ち上がったジルグは 勝ち誇るでもなくヴィータにその一言を投げかけ、さっさと訓練場を出て行った。 あっけに取られたままのフォワード陣をよそに、なのはがヴィータに近づき声をかける。 「ヴィータちゃん………」 ヴィータはなのはのほうをチラリと見ると再び地面に視線を戻し 「……ごめんななのは。悪ぃけどしばらく一人にしてくれ……」 肩が小刻みに震えている。 相当に悔しいのだろう、なのははそれ以上何も言わずに フォワード陣に声をかけて彼らと共に訓練場から出て行った。 「チクショウ……確かに強ぇ……だけど、あたしは絶対にお前の事を認めないからな……」 心の奥底から搾り出す様なヴィータの声は、訓練場の静寂と共に消えてゆくのだった。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/aaboukentan/pages/17.html
_ `ヽ\ _,. ----- 、 ヽ ヽ ヽ ヽ. ___,. -=≦ \} } /} \,. -‐ / / / `ヽ / / / ヽ. / 〃 / / ヽ ヽ \ i / // / / / / / ,. ! | | ! |// / | | | | { | ! i ! | i! | | | | _∧-┼イ 、ヽト、 ト、 | / ! ! ! | i | ´「 |斗=ミ∧ | 斗=ミ、ト、i |/ ,' | ! | ! f爪_, }}ハ ヽ| 爪_ノ j/ ! / / ヽ ! ! \| 弋zり jノ弋zり| 》j/ / \| | ! ´ ` ´ `jイ / \! | 、 ,/ / / r‐ \ | >、 ´ ` ,.イ/ / / 、_ /ヽ ヽ \ ! ≧=-=≦ }. .|/ / | 〈 \ \\! / . ./ / ト、 / \ \__〉 .\ / .,.〈 / / ヽ / \ | \ . \_/ ./ 〉 / | | ヽO_》 \_/ 《O / !───────────────────────ユーノ・スクライアメイン/魔界人 サブ/サーヴァントLv4HP 32+2 = 34【ステータス】 4*4 =16武勇 1機敏 4知力 10耐力 1攻撃 1+6+(2d6) =7+(2d6)防御 30+4 =34魔力 10*2+10 =30魔防 10+4 =14技量 4*2+1 =9【装備】右手/【奏血の呪印】(スタッフ+2)/紋章/物理6+(2d6)/魔力+10左手/両手持ち防具/クローク+1/服/防御+4【技能】血塊魔法Lv3/ブラッディ・メアリーLv2(A) ダークホールLv1(A) バリアジャケット(P)使い魔術(ユーノ)Lv2/従者の献身Lv1(A) トランス・アニマルLv1(A) サーヴァント(P)【アクティブスキル】・ブラッディ・メアリーLv2/《宣言》血を操作して攻撃する 一体に(魔力)分のダメージ 【一戦闘SL回】・ダークホール/《宣言》敵全体を高確率で睡眠状態にする 【一冒険SL回】・従者の献身Lv1/《併用》/味方一体を指定、使用したターン、その相手への攻撃をかばう 【一冒険SL*3回】・トランス・アニマルLv1/小動物に変身できる、レベルが上がると変身できる動物の種類が増加する 【無制限】【パッシブスキル】・バリアジャケット(事故)/防御値が耐力の代わりに(魔力)分増加する・主人との契約【やる夫】/主人とHPを自由にやり取りでき、念話などを行える・サーヴァント/主人がパーティにいる場合パーティ枠を圧迫しない ステータスにサブ職補正がつかない ※この効果は、一パーティにつき一人までしか発動しない【フレーバー】・男の娘?(事故)/どうやら性別があやふやなようだ……・魅了/容姿、仕草が魅力的 男女問わず好感を得る・T・A(フェレット)/トランス・アニマルでフェレットに変身できる
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3537.html
ティアナとスバルがジルグに朝の自主錬への参加を求めてから3日が経った。 今のところジルグは朝錬に来る様子はない。 昨日などは朝食時にスバルの冗談交じりの「何で来てくれないんですかー?」 という言葉に「寝坊した」と冗談とも本気ともつかない顔でジルグは答えていた。 そして早朝の訓練場、今日もティアナとスバルの朝錬が開始されようとしていた。 「さて、そろそろ始めようか」 「そうだね」 「でもその前、にっ!!」 「うわっ!!」 と突然ティアナがスバルを引っ張り横に跳んだ。 直後にその場所を通り過ぎる魔力弾。 「よく避けたな」 物陰からジルグが姿を現す。 「あ、危ないじゃないですかー!!」 とスバルが抗議の声を上げるが無視するジルグ。 「訓練の手伝いを頼んだ時点でこういうケースも予想してましたから」 「なるほど、良い判断だ」 スバルとは対照的に涼しい顔をして答えるティアナ。 「で、俺は具体的に何をすれば良い?」 ジルグの疑問にティアナが答える。 「私とスバルでジルグさんとの模擬戦です。 実力が違いすぎるのでジルグさんからすれば物足りないかもしれませんが 模擬戦を一戦こなすごとにミーティングをして 修正する点やジルグさんが気づいた私達の欠点などを指摘してもらえないでしょうか?」 ティアナの言葉に頷くジルグ。 「手加減は有りでも無しでも構いませんし、それはジルグさんにお任せします。 ……ただ、ミーティングができなくなると困るので二人同時に昏倒させるのは すみませんけど遠慮していただけないでしょうか?」 「わかった、だがこれはどちらかというとなのは教官殿の仕事じゃないのか?」 ジルグの言葉にティアナは少し口ごもる。 「なのはさんは……ある意味優しい所があって あからさまに欠点を指摘してくれるタイプではないですから…… そういえば『高町教官』じゃなくなったんですね」 「この間捕まったときに命令されてしまったからな、今後その呼び方をしたら減給だと」 可笑しそうに笑うジルグを見て、思わずその場面を思い浮かべて噴出しそうになる二人。 「ではお願いします!」 「行きますよジルグさん!!」 「了解だ」 ……一分後、早くも地べたに転がる二人の少女の姿があった。 「…は…はや……」 「……もうちょっと粘れるかと思ったのに……」 「さて、ミーティングを始めるか?」 「は…はい……」 二人は痛む体を無理やり動かしてジルグを加えて三角形になって地面に座り ミーティングを開始した。 ちなみに先ほどの戦闘の経過はこうである。 スバルがプロテクションを発動させながらジルグに突っ込み ティアナはクロスファイアシュートで左右からジルグを攻撃したのだが 後退して射撃するかと思いきや、ジルグはギリギリまでスバルが接近するのを待ち 突如跳躍補正デバイスを吹かして間合いを詰めた。 突然接近してきたジルグに完全に攻撃のタイミングをずらされたスバルは慌てて拳を構えるが ジルグは左手をスバルの肩に当ててフワりと跳躍、スバルの拳は空を切った。 そのまま空中で姿勢を回転させ、ジルグはダガーをスバルの背中に叩き込む。 ジルグが瞬間的に間合いを詰めたことで誘導弾は外れる。 ティアナは次の魔力弾を放とうとクロスミラージュを構えるが ジルグは着地と同時にティアナに向かって射撃 これを回避しながらティアナはシュートバレットを放つが、 かわしたはずの魔力弾が後ろからティアナを直撃。 こうしてあっという間に戦闘は終了したのであった。 「まず敗因は何だ?」 「あたしの場合は……ジルグさんはまず距離をとって射撃戦をしてくると思い込んでたから……かな?」 「あたしはジルグさんの射撃を誘導弾ではなくただのシュートバレットだと思い込んでた……からですね」 二人の言葉に頷くジルグ。 「相手の装備や戦闘スタイル、見た目や思い込みだけで対処を考えるな。 俺の装備は近接戦闘にも対応できるようになっているし 手持ちでなくとも近接戦闘や射撃の手段を相手が持っている可能性は常に頭に入れておくことだ」 真剣な表情でジルグの話を聞くティアナとスバル。 「わたし達の攻撃にも問題があったのでしょうか?」 「様子見の攻撃としては悪くない。 だが、相手もそれに合わせて様子見で済ませてくるとは考えないことだな。 スバルが突然の間合いの変化に対応できなかったのは修正すべき点だろう」 ティアナの問いにジルグが答える。 「漫画やアニメだと最初はお互い様子を見終わって A「これが私の本気です」 B「私はその倍強いです」 A「実は実力を隠してました」 B「奇遇ですね。私もまだ本気ではありません」 A「体に反動が来ますが 飛躍的にパワーアップする術を使わせていただきます」 B「ならば私も拘束具を外します」 A「秘められた力が覚醒しました」 B「私は特殊な種族の血を引いており、 ピンチになるとその血が力をもたらします」 A「覚悟によって過去を断ち切ることで 無意識に押さえ込んでいた力が解放されます」 B「愛する人の想いが私を立ち上がらせます」 ってなるんだけどなー」 スバルの例え話に苦笑するジルグ。 「そんな相手なら実戦では本気を出す前にやられて終わるだろうな」 「ですよねー」 事実あっさりとやられてしまったのでスバルもそれは認めざるを得ない。 「理想を言えば相手に力を出させずに勝つことだ。 力が劣る相手に真っ向からぶつかっても勝てるはずがない。 多対一なら数の優位性を生かして一対一の状況を減らすことで相手の手を詰まらせろ。 逆の状況であれば瞬間的でも構わない、一対一の状況を作り上げろ」 「何とかして不意を突いたり一斉に一人にかかれって事ですか?」 スバルが尋ねる。 彼女の性格上、余りそういうのは得意ではないし、好きでもない。 「正面から戦って勝てるならそれでいい。 だが、それが出来ない場合を考えてこの訓練をしているんじゃないのか?」 「う……」 元はティアナが言い出したこととはいえ、確かにジルグの言うとおりである。 「まぁ地力を付けるのが一番だというのは否定しない。 その為に訓練をしているんだろうしな」 ジルグの癖に至極まともかつ建設的な台詞である。 「そうですね、それはそう思います」 ティアナも頷く。 なのはの訓練に不満があるわけではない。 事実、彼女の訓練プログラムのおかげで自分達の実力は短期間で飛躍的に向上しているのだ。 だがそれだけでは足りない、 どんな相手であろうと多彩かつ意表をつく手で 魔力に勝る相手すら翻弄するジルグの技量を取り入れることは 実力では隊長陣に比べて数段劣る自分達にとって強力な武器となるはずである。 だがジルグの言うとおり、地力を付けるのも大切なことだ。 元々の実力があってこそ搦め手が生きるのである。 その点についてはティアナもちゃんとわかっていた。 だからこそ普段の訓練でなく、自主錬に付き合ってもらっているのだ。 「この調子だと、今日は後一戦か。どうする?」 「「お願いします!!」」 「わかった」 ミーティングは思った以上に長引き、朝食の時間まであと僅かであった。 ……そして予想通り、朝食の時間前にきっちりと二人を叩きのめしたジルグは 「じゃあ先に行く」 と二人に声をかけ、朝食をとりに食堂へ向かうのだった。 「ねぇティア……」 「なに……」 「手加減……してくれてるのかな……?」 「たぶん……ね…」 「朝ごはん……どうする?」 「……あと五分休んだらいきましょ」 「……うん」 そして数日後、今日もフォワード陣は隊長陣を相手に個別訓練を受けていた。 「グッ!!」 「もっと魔力を一点に集中させろ! そんなんじゃ防御の意味がねーぞ!!」 「ハ、ハイッ!!」 グラーフアイゼンの一撃を拳に集中させた魔力で受け止めるスバル。 あらかじめ来ることはわかっていてもその威力はやはり凄まじい。 上からの一撃で足が地面にめり込み、前からの一撃に危うく吹っ飛ばされそうになる。 「どうした! もう終わりか!?」 「ま、まだまだぁ!!」 「よし! もういっちょ行くぞ!!」 「ハイ!!」 別の場所ではなのはの放つアクセルシューターをティアナが必死に迎撃していた。 (数が多すぎる……撃ち落しきれない!!) 至近に迫ったアクセルシューターを回避しつつ何発か撃ち落し、とっさにしゃがみこむ。 「!!」 直前までティアナのいた場所を回りこんでいた魔力弾が通り過ぎる。 「うん、いい判断だよティアナ。 センターフォワードの役割は足を止めて視野を広く持ってみんなを助けること。 目の前の事だけに集中するんじゃなくて常に全体を見る癖を付けて」 ティアナの息が荒い、流石にここ連日のオーバーワークが体に影響を及ぼしているのだろうか。 それに気づいたなのはが気遣わしげに声をかける。 「ティアナ、大丈夫? ちょっと、疲れてるみたいだし少し休憩しようか?」 「いえ、大丈夫です。それに実戦では疲れてるからといって敵が手を止めてくれるわけじゃありません」 「それはそうだけど……」 なのははホテルアグスタの事件以降、ティアナの訓練に対する気の入りように少し危惧を抱いていた。 確かに訓練熱心なのは悪いことではない。 だが、それで体を壊してしまっては本末転倒である。 「一旦一息入れるよ、私も少し疲れちゃった」 にゃはは~と笑いながらアクセルシューターを打つ手を止める。 「……わかりました」 上司にこういわれては流石にこれ以上強情を張るわけには行かない。 ティアナは渋々頷くのだった。 一方、シグナムはその様子を眺めていた。 ティアナ、スバルとは別の場所でエリオとキャロがフェイトから個人スキルの訓練を受けているのが見える。 「シグナム姉さんは参加しないんで?」 ヘリの整備を終えて手持ち無沙汰になったのか、 同じく訓練の見物に来たらしいヴァイスがシグナムに声をかける。 「私の戦い方は古いからな、人に教えるには向かん。 戦法など”届く距離に近づいて斬れ”ぐらいしか言えん」 「ヘヘ、それも凄い奥義だと思いますけどね」 いかにもシグナムらしい答えにヴァイスは笑う。 「そういえば……」 「なんです?」 「お前は最近ジルグとよく話しているようだが、どんな様子だ?」 シグナムの唐突な話題振りに一瞬考え込むヴァイス。 「いや、どうって言われても……別に普通ですよ? 起きる時間が同じくらいみたいなんで洗面所でよく会いますね。 たまにエリオがいる時もありますけど、普通に挨拶してって感じです」 「そうか……」 「? 前から思ってたんですけど、なんか隊長の皆さんジルグに対して神経過敏すぎじゃないですか? 確かに山岳列車の時やヴィータ副隊長に勝っちまったって聞いたときは 俺もびっくりしましたけど」 「そう……そうだな。すまん、さっきの話はしなかったことにしてくれ」 シグナムの言葉に不思議そうな顔をしながらヴァイスは「わかりました」と返すのだった。 「模擬戦?」 「はい、明日スバルと一緒になのはさんと模擬戦を行いたいんです」 「それは……構わないけど」 なのはが口を濁す。 最近のスバルとティアナは明らかにオーバーワーク気味だ。 体調が万全でない状態で模擬戦を行っても100%の力を発揮できるかどうか…… 「では失礼します」 なのはの言葉を肯定ととったのか、ティアナはスバルと訓練所を出て行った。 その夜、ティアナとスバルはジルグの部屋を訪れていた。 「なるほど、しかし勝てるとは思えないが?」 「はい、良くて勝率は5,6割だと思います」 「ティア……」 ならどうして?という言葉をスバルは飲み込む。 なぜティアナが無茶といえるほどの努力を続けてまで強くなろうとしているのか 彼女は知っているからだ。 「で、今話したのが対教官殿の作戦か」 「はい」 「足りないな」 「え?」 ジルグの言葉にティアナは戸惑った声を上げる。 現状ではこれが自分達にできる最善の作戦であると思っているのだ。 「万に一つ成功すれば”勝つ”事はできるかもしれない。 が、おそらくは読まれて終わるだろうな」 「そんな……じゃあ、どうすれば……」 すでに申し込みはしてしまったのだ。 「”勝つ”のではなく”一矢報いる”ならもう一手打てるだろう?」 ジルグの言葉にティアナは考え込む。 自分の魔力… 自分達の作戦… なのはの実力… もし作戦が読みきられたら?… その後自分達はどうなる?… ”勝つ”のではなく”一矢報いる”… 視野を大きく… さまざまなワードがティアナの頭を駆け巡る。 そして…… 「あ……」 何かに気づいたようにティアナの口から呟きが漏れる。 「明日の模擬戦、面白そうだから俺も見物させてもらうとしよう」 他人事のように言うジルグにティアナは敬礼する。 「ありがとうございます! 大変参考になりました!」 そしてスバルの存在すら忘れたように部屋を飛び出してゆく。 取り残されるスバル。 「何があいつをああも突き動かす?」 一人残ったスバルに問うジルグ。 彼が他人の事を聞くというのは極めて珍しい。 「ティアには……死んだお兄さんがいるんです」 ジルグのほうを向くでもなく、淡々と語り始めるスバル。 ティアナにはかつて管理局の一等空尉だった兄がいたこと。 その兄が逃走した違法魔術師の追跡任務中に殉職したこと。 殉職した兄が「能無し」扱いされたことを見返すため、 兄から教わった精密射撃魔法を手に、その力を証明しようと努力し続けていること。 「……なるほど」 自分がその立場だったらどうだろう? 今の自分ならなんとも思わないだろう。 だが幼い頃に父親が死に、「無能将軍」などと呼ばれていたとしたらどう思っただろうか? やはりティアナのように努力を積み重ねて父親を超える将軍になろうとしていただろうか? (意味の無い仮定だな) とジルグは頭に浮かんだ考えを打ち消す。 そしてふと、あの能無しだったらどうだろうか、と考える。 あいつは自分が味方殺しの危険人物であるにもかかわらず そんなの関係ないとばかりに真っ向からぶつかって来るような奴だ。 結局交わした約束を守ることは出来なかったが 『ジルグの死』を奴はどう受け止めたのだろうか? あの大バカはきっとティアナのように馬鹿正直に他者の死を背負い込み、足掻き続けるのだろう。 「……バカな奴だ」 「え?」 「なんでもない。それよりそろそろ眠りたいんだがいつまでそこにいる? それとも一緒に寝るか?」 冗談で言った言葉にスバルは耳まで真っ赤にして飛び上がる。 「い、いえっ! おやすみなさーい!!」 慌ててジルグの部屋を飛び出してゆくスバル。 こういうところの反応は姉のギンガとよく似ている。 その様子を苦笑しつつ見送ると、ジルグはベッドに体を横たえた。 ジルグはティアナたちがなのはに勝てるとは思っていない。 だが、戦いようによっては…… 「確かに一矢を報いることは出来るかもしれないが、な……」 その後どうなるか、ジルグにはなんとなく予想がついていた。 だがそれは彼女達の問題であってジルグの問題ではない。 なるようにしかならないだろう。 こうして波乱を予感させる模擬戦前日の夜は静かに更けていった。 前へ 次へ